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「じつは巨人が最下位」「阪神2位、DeNA1位」それでも…なぜ誰もヤクルトを止められないのか? 村上宗隆“衝撃の2カ月間”をまとめてみた
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2022/09/11 17:02
9月9日の広島戦で、野村克也・落合博満超えとなる53号ホームランを放った村上宗隆(22歳)
7月から8月にかけての5打席連続本塁打はいまだに記憶に新しいが、8月の月間打撃成績がとんでもないことになっていた。
打率 .440
本塁打 12本
打点 25
出塁率 .588
長打率 .987
OPS 1.575
目玉が飛び出る数字ばかりだ。
打率.440もすごいが、出塁率と長打率がべらぼうにすごい。打席に立てば半分以上は出塁するわけだし、8月の33安打のうち16本は長打だ。.OPSが1.500を超える成績を目にしたことは、あまり記憶にない。
この村上の成績はなにを意味するだろうか。
山田(8月月間打率.205)、塩見(8月月間打率.183)らの主力が本調子ではない状況で、村上のバットでヤクルトはなんとか8月を勝ち越せたといえる。それだけ、村上はヤクルトを支えたのだ。もしも、村上の調子が悪かったら……。ペナントレースはより白熱していた可能性がある。
現状、ヤクルトのリーグ優勝は動かないと見るが、コロナ禍によるダメージはくすぶっている気がする。山田は徐々に調子を取り戻しつつあるが、塩見のバットが湿ったままだ。
ただし、8月26日からのDeNAとの3連戦では、久しぶりにスイッチの入ったヤクルトを見た。3連敗すればゲーム差1にまで追い上げられる状況のなか、相手を圧倒した。なにか選手たちが、久しぶりの「しびれる戦い」に飢えていたような印象を受けた。
この連戦での集中力を再現できれば、クライマックスシリーズでも優位なことは間違いないだろう(昨季の奥川恭伸、高橋奎二のような絶対的な先発がいない不安はあるにせよ)。
10月のクライマックスシリーズに向け、9月は高津監督の先発の整備、ブルペンの方程式の確立などなど、チームの「チューニング技術」に注目していきたい。
【2位】DeNA「唯一の誤算は…」
コロナ禍でもっとも勝率が高かったのはDeNAだった。
28勝16敗、得点156に対し、失点は148。12の貯金を作っているわりに得失点差が少ないのは大敗を喫した試合が2試合あるからだが、投打ともにバランスのいい戦いを見せている。
実は、DeNAは4月に濵口遥大、山崎康晃、牧秀悟らが感染し、4月8日から10日にかけての中日戦が中止になっている。4月は台所事情が苦しく、7勝12敗と負けが込んでしまった。それに比べ、夏のコロナ禍の期間中は、他球団よりは被害が少なかったといえる。