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「じつは巨人が最下位」「阪神2位、DeNA1位」それでも…なぜ誰もヤクルトを止められないのか? 村上宗隆“衝撃の2カ月間”をまとめてみた
posted2022/09/11 17:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Sankei Shimbun
今季のセ・リーグは、7月9日から違うフェイズに入った。
それまではヤクルトの独走。7月2日にはマジック53が点灯したが、これは「点灯最速記録」だった。従来の記録は1965年の南海が持っていた7月6日だったが、これを塗り替えた。
しかし7月9日に衝撃が走る。
高津臣吾監督をはじめとして山田哲人、長岡秀樹、投手陣では清水昇、田口麗斗など合計14人の感染が分かり、阪神戦は中止に。その後も塩見泰隆らが離脱するなど、一気に戦力がダウンした。
いわゆるコロナ禍の「第7波」。被害はヤクルトだけではなく、各球団へと広がっていった。つまり、7月9日からペナントレースはいつ主力選手が離脱するか分からないという不安のなかで進むこととなり、それは2カ月の間続き、今も不安が完全に払拭されてはいない。
本稿では、7月9日から9月8日にいたるまでの2カ月をコロナによる特別期間と考え、各球団への影響を考察してみた(※本文中の成績は9月8日終了時点)。
コロナ禍における2カ月間の勝敗と得失点差を並べてみたが、勝ち越しているのはDeNAと阪神で、現在首位のヤクルトも苦戦したことが分かる。
【1位】ヤクルト、得失点差マイナス30も…「苦しい2カ月間」
5月から7月にかけ、ヤクルトは充実していた。同一カードの勝ち越し14を記録するなど、昨季の日本一球団は「盤石度」を増している印象だった。ところが――。
7月9日に高津監督をはじめ主力選手が離脱すると、13日の中日戦から松本ユウイチ一軍作戦コーチが指揮を執る形で戦いを再開したが、オールスターを挟み、コロナ禍以降の7月の成績は4勝9敗、しかも得失点差がマイナス30。投手陣が打ち込まれ、大敗を喫するケースが目立ち始めた。
振り返ってみると、ヤクルトにとってコロナ禍の影響は想像以上に甚大だった。ヤクルトの場合、主力選手が一気に離脱したため、それまでの勢いが止まり、選手たちが徐々に復帰した後も本調子に戻るまでかなりの時間を要した。
選手は徐々に復帰してきたが、8月に入ってからも苦しい戦いは続き、8月5日の巨人戦から12日のDeNA戦まで7連敗となり、ひと月で別のチームになってしまった思いがした。
「村神様」の目玉が飛び出る数字
それでも8月のヤクルトの成績は12勝11敗1分。7連敗があってもよくぞ勝ち越せたと思うが、これもひとえに「村神様」の存在があったからだ。
8月の村上の打撃は、日本のプロ野球史に残る。