大学野球PRESSBACK NUMBER
「日本一偏差値が高い」東大野球部の文武両道エリートはどんな一流企業を選ぶ? 過去31年間の就職先ランキング…2位は電通・NHK、では1位は?
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph bySankei Shimbun
posted2022/06/11 11:03
東大野球部時代の宮台康平投手と喜入友浩捕手(右、2016年撮影)。宮台は17年ドラフト7位で日本ハム入り。喜入は17年にTBSに入社しアナウンサーに
94年の三井不動産と95年の東急不動産以来、東大野球部が縁遠かった不動産業界には、12年以降は打って変わって8人が進んだ。特に三井不動産は5人と、個別企業の中では三菱商事、住友商事と並んでトップの入社数を誇る。オリンピック需要などが期待された時期でもあり、不動産価格が急上昇する世相の中で、神童たちの新たな進路としてフォーカスされたのかもしれない。
放送業界も依然として支持され、特に3人が入局したNHKは不動の人気だ。学生コーチだった中村信博(12年卒)は現在、NHK松山放送局でアナウンサーを務める。中村は高松高校時代、21世紀枠で選抜高校野球大会に出場し、控え捕手としてベンチ入りした。2浪の末に東大野球部に入部するも、右肘を痛め、学生コーチに転身。数少ない甲子園経験者として、チームに貢献した。
NHKに次ぐのは17年にまとめて2人が入社したTBS。斉藤正直(投手)は、2年ほどで退社し、19年に株式会社pamxyに入社。同社は、企業の動画や芸人のナイツ塙のYouTubeチャンネルの制作などを手がけている。斉藤と同学年の喜入友浩(捕手)はTBSにアナウンサーとして入社。民放キー局のアナウンサー採用は東大野球部としては史上初だった。喜入は、現役時代には、1年後輩で18年に日ハムに進んだ宮台康平(投手)とバッテリーを組んでいた。宮台がドラフト指名された会見では、すでにアナウンサーだった喜入が報道陣として質問する場面も話題になった。
近年、東大生に人気のコンサル業界は?
また、この期間には、日本ナンバーワン企業であるトヨタ自動車が、東大野球部卒部生を迎えた。92年以来、卒部時点での進路としてはゼロだったが、16年と17年の立て続けで採用している。ただ、そんな期待の新人だった高木一史(外野手・16年卒)は、3年でトヨタを退職し、現在はサイボウズの労務と育成を担当している。『拝啓 人事部長殿』(ライツ社)という本まで出版する、人事労務管理のプロだ。
他で着目したいのはコンサル業界への進路者数。東京大学の学生で構成されている、東京大学新聞社によれば、近年の東大生の就職先として、コンサル業界が上位になっている。しかし、東大野球部の進路を見ると、コンサルの比率は就職者の3~5%と30年前からほとんど変わらないのは興味深いところだ。東大野球部とコンサル業界の相性については、関係者への追加取材で明らかにしていきたい。
大学院進学については、例年と同じく理系の農学部、工学部、理学部が多かったが、今回は文系、特に教育学部からの進学者も目立った。在学者は前期間と比べて、割合が減り、「未定」もわずかひとりに減少した。
日ハムドラフト7位、宮台の今
さて、次はこの期間の最大の特徴に移ろう。それは野球継続者の数が9人と多いことだ。