Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「バルサの練習に参加できないか」頼んだ相手はまさかの…岩本輝雄が振り返る引退前の仰天エピソード《戦友・森保監督への要望》
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2022/04/08 17:04
度重なるケガにも泣かされたサッカー人生を振り返った岩本輝雄。懸命にリハビリに励んでいた頃、幸運に恵まれた
日本代表の森保一監督とは京都パープルサンガ、ベガルタ仙台時代のチームメイトで、サッカー談義を交わす仲だ。メディアの企画でこれまで何度か対談を行ったことがある。
「ポイチさんとは(サンフレッチェ)広島時代から、いろいろ話をさせてもらっているよ。代表監督になってからも定期的に話をしている。もっと大胆に、周りを気にせず、選手に気を使いすぎず、自分の思ったようにやっちゃえばいいのにって外にいる俺は思うけど(笑)。連勝でW杯出場を決めたのは、すごいよね。ポイチさんは静かそうに見えるけど、闘志を秘めているから。W杯まで残り7カ月くらいでしょ。いろいろ準備はしてるんじゃない?」
W杯本大会を迎える頃には、調子を上げている選手もいれば、所属クラブで出場機会を失ってしまう選手もいるだろうから、メンバーが変わる可能性は少なくない。そのなかでも岩本が気がかりなのは、センターフォワードの選手層だ。
「あそこのポジションはボールを収めて、キープしないといけないけど、それができるのは大迫(勇也)しかいないよね。その大迫も日本に戻ってきて、なかなか調子が上がっていない。大迫がダメだっていうことじゃないけど、誰かが出てきてくれないと心配だね」
「左利きだけのスクールをつくるのも良いな」
岩本自身は引退後、引き出しに詰め込んできたアイデアを、アウトプットする気はないのだろうか。森保や同級生の名波浩のように、指揮官として——。
「イメージはあるよ。俺は別にゼロに抑えようなんて思ってない。そこにこだわると、アタッカーの個性が消えちゃうからね。バルサみたいにしたい、フロンターレみたいにしたい、マリノスみたいにしたい……いろんなサッカーがあるけれど、結局、選手がいなければできないよね。やっぱり選手ありきなので。そこで柔軟にできるかどうかじゃない?」
そう言いながらも、岩本は次の言葉で否定した。
「でも、やっぱりストレスが半端ないから、監督はやらないかな(笑)。それより自分がオーナーになれるんだったら、面白いかもしれないね。あと、アヤックスみたいに左足利きだけのサッカースクールを作るのもいいな。左足利きの選手だけを育てて、価値を上げたいね」
平均して年6回、もう70回ほど訪問したというバルセロナへは、コロナ禍に見舞われたこの2年は行けていない。
「Jリーグの試合とか、Jクラブとか、これと思ったところには足を運んでいるけど、やっぱり海外に出ないと頭が硬くなってきて。いろんなものを見て、オープンにしていかないと。サッカーもそうだけど、人間としても柔らかくしないとね。このままだと面倒くせえジジイになりそうなんで、気をつけます」
春からはイタリア語の番組に出演するようで、写真撮影中の岩本は覚えたてのイタリア語をしきりに披露してみせた。
そんな自由人がサッカーへの探究心を生かし、指導者として活躍する姿を見てみたい気もするが、やっぱり彼は自由気ままな生き方を貫くのだろう。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。