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「家族構成、苦労した姿も見ているから…」なぜジェフ小林慶行監督48歳は「戦術を細かくやり過ぎない」のか〈熱すぎJ1昇格スピーチで話題〉
posted2026/02/26 17:03
熱量ある言葉を口にするジェフ千葉の小林慶行監督は、選手たちにどんな働きかけをしているのか
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Kiichi Matsumoto
「この3年間に集まってくださったサポーターの皆さんは、普通に考えれば2回に1回は勝ち試合を見ているんですよね。来年はJ1に行きますが、そんな簡単じゃないです。難しい時間があると思いますが、そんなときでも本当にクラブをそのまま愛してもらえますか?」
17年ぶりのJ1昇格を決めた昇格プレーオフ決勝直後、小林慶行ジェフユナイテッド市原・千葉監督は、4分半にわたりピッチ上でサポーターに熱く語りかけた。
「選手やスタッフに『長いよ!』と言われたんですよね」と小林自身が苦笑するが、話した内容はまったく覚えていないという。
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「それまでずっと考えてきたことが、自然と口をついて出たんだと思います」
クラブへの思い、サポーターへの思い、そして選手への思い……。すべてを大切にしているからこそ、あふれ出る思いは私たちの胸を突く。
そんな小林が実践するコュニケーション術とは。選手とフェアに接するために、彼はどんなことに留意しているのか。そして初めて迎えるJ1の舞台、百年構想リーグへの展望は……。決して楽観的になれない状況を客観的に捉え、あくまで現実に即して射程を定める。だからこそ小林の言葉は、説得力に溢れている。
「選手やスタッフに『長いよ!』と言われたんですよね」
そう冗談めかしつつも――小林がクラブで実践するコミュニケーション術とは。選手とフェアに接するために、彼はどんなことに留意しているのか。そして初めて迎えるJ1の舞台、百年構想リーグへの展望は……。
決して楽観的になれない状況を客観的に捉え、あくまで現実に即して射程を定める。そんな小林の言葉は、説得力に溢れている。
“選手と直接話すのをほぼやめた”深い理由
――小林さんは非常に言葉がはっきりしていますが、どういうことを意識されていますか。
「誰にも同じように、なるべくフェアに話します。クラブにはいろいろなキャリアの人間がいます。カルリーニョス・ジュニオはスペシャルな実績がある。逆に姫野誠のように高校生や大卒1、2年目、まだまだこれからという選手たちもいる。だからこそ選考はフェアに、キャリアは関係なく判断します。
とはいえ僕は選手に対して愛情があります。情があると自分でわかっているので、1年目の途中から選手と直接話すのをほぼやめました」
――どうしてでしょうか?
「選手と直接話したら、最終決断の際に引っ張られてしまうからです。彼らの背景や家族構成、苦労して這い上がってきた姿、努力する姿も見ている。でもそれは関係なく、ピッチ上のパフォーマンスで全てを決めねばならない。監督には選手と話すことが得意な人もいるでしょう。でも自分は性格的にそうではなく、ジャッジが難しくなるという経験を最初の半年でしました。
クラブではもう1人の自分というか、仮面を被った自分を作っていて、冷静に判断するようにしています。そのうえで選手をリスペクトして、誠実に接する。土台にしっかりと愛を持って、彼らの成長を一番に考えて接するのは変わらないです」
フェアな競争を生み出す環境を整えるのが僕の仕事
――小林さん自身がフェアであって、基準を明確に持っている。選手にもそれは伝わっているから、今があるわけですね。

