箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「監督より僕の方がタイム速いですよ」箱根駅伝ランナーに起きている“1万mのインフレ問題”《希少だった「28分台」も今や…》
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byJIJI PRESS/Nanae Suzuki/Asami Enomoto
posted2021/11/23 11:04
歴代の箱根駅伝トップランナーたちは「1万m」の記録でその走力を計られてきた
(1)27.39.21 田澤廉(駒大3)
(2)27.41.68 鈴木芽吹(駒大2)
(3)27.59.74 井川龍人(早大3)
(4)28.02.52 唐澤拓海(駒大2)
(5)28.03.37 市村朋樹(東海大4)
(6)28.03.39 栗原啓吾(中央学大4)
(7)28.05.91 石原翔太郎(東海大2)
(8)28.06.26 伊豫田達弥(順大3)
(9)28.06.33 中谷雄飛(早大4)
(10)28.08.58 藤本珠輝(日体大3)
※2020年の日本ランキング100位は28分21秒79
昨年4月に発売された『ズームエックス ドラゴンフライ』(以下、ドラゴンフライ)だ。ナイキ厚底シューズにも使用されている約80%のエネルギーリターンを誇る特殊フォームと、硬質のプレートを搭載。履いた選手が、「これまでのスパイクとは全然違う」と話すほどの威力がある。
昨年12月の日本選手権10000mでは相澤晃(旭化成)が日本記録を11秒近く更新する27分18秒75で優勝。女子の新谷仁美(積水化学)も日本記録を一気に28秒以上も短縮する30分20秒44で突っ走った。今年5月3日の日本選手権10000mでトップスリーに入った伊藤達彦(Honda)、田澤廉(駒大3)、鈴木芽吹(駒大2)が着用していたのもドラゴンフライになる。さらに男女の世界記録(ジョシュア・チェプテゲイの26分11秒00/レテセンベト・ギデイの29分01秒03)もナイキの“高速スパイク”がもたらしたものだ。
箱根ランナーたちも10000mレースでは大半がドラゴンフライを着用している。今後は11月23日の10000m記録挑戦競技会、11月24日のMARCH対抗戦、11月27日の八王子ロングディスタンスなどに多くの選手が出場する。今冬はどんな好タイムが生まれるのか。
「28分台」「27分台」の価値は変わっている
ただ記録の“価値”を考えると、5年前と比べて約30秒、15年前と比べて約35秒、25年前と比べて約45秒の“補正”が必要になるだろう。以前と比べて、「28分台」「27分台」の価値は変わっている。また箱根駅伝の区間タイムも当然上がっている。5年前と比べて約60~70秒、15年前と比べて約70~80秒、25年前と比べて約90~100秒ほどの“差”があると考えた方がいい。気象条件に恵まれれば、2022年大会も区間記録の更新が大いに期待できるだろう。