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「監督より僕の方がタイム速いですよ」箱根駅伝ランナーに起きている“1万mのインフレ問題”《希少だった「28分台」も今や…》

posted2021/11/23 11:04

 
「監督より僕の方がタイム速いですよ」箱根駅伝ランナーに起きている“1万mのインフレ問題”《希少だった「28分台」も今や…》<Number Web> photograph by JIJI PRESS/Nanae Suzuki/Asami Enomoto

歴代の箱根駅伝トップランナーたちは「1万m」の記録でその走力を計られてきた

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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JIJI PRESS/Nanae Suzuki/Asami Enomoto

 今年5月の日本選手権10000mは田澤廉(駒大3)が日本人学生歴代2位の27分39秒21、鈴木芽吹(駒大2年)が同3位の27分41秒68で走破した。他にも中谷雄飛、太田直希、井川龍人の早大トリオが27分台を持つなど、近年は10000mの記録が“インフレ”している。

 筆者の学生時代(1995~99)は28分台ですら希少価値があった。時代の流れは凄まじいものがある。しかし、ある監督は「これだけタイムが上がっているのはスパイクの影響に他なりません」と話す。一方で、「監督よりも僕の方がタイムは速いんですから」という学生も出てきているという。急激なタイムアップに戸惑っている人たちは少なくない。そこで箱根駅伝ランナー(※関東学連所属の日本人選手)たちの10000mシーズンベストを時代とともに振り返り、その“本当の価値”を考えてみたい。

25年前(1996年)の学生トップ10は?

 1996年度のトップ(28分31秒61)は5000mで13分55秒54の高校記録(当時)を保持していたスーパールーキー・古田哲弘(山梨学大1)だ。古田は関東インカレ10000mで優勝をさらうなど、怪物ぶりを発揮。箱根駅伝(97年)は8区を1時間4分05秒の区間記録で爆走した。

 2位(28分39秒07)の榎木和貴(中大4/現・創価大駅伝監督)は箱根駅伝で4年連続区間賞(8、8、4、4区)の偉業を達成。3位(28分50秒21)の三代直樹(順大2/現・富士通コーチ)は2区で区間8位だったが、4年時に同区間で1時間6分46秒の区間日本人最高記録を打ち立てることになる。なお4年時の10000mベストは28分30秒87だった。

◆1996年度の学生ランナー10000mトップ10

(1)28.31.61 古田哲弘(山梨学大1)
(2)28.39.07 榎木和貴(中大4)
(3)28.50.21 三代直樹(順大2)
(4)28.53.06 藤田敦史(駒大2)
(5)28.55.7 桑本聡(明大4)
(6)28.56.0 藤本季也(国士大3)
(7)28.56.0 帯刀秀幸(亜細亜大2)
(8)28.56.9 佐藤武(東洋大3)
(9)29.00.0 菅野邦彰(亜細亜大3)
(10)29.02.13 小林雅幸(早大4)
※日本ランキング100位は29分04秒6

 この年の学生トップランナーは小林雅幸(早大4)だろう。10000mベストは28分09秒17。4年時は出雲駅伝の最終6区で大逆転Vを飾り、全日本は最終8区で57分46秒の好タイムで区間賞を奪っている。最後の箱根は故障の影響で7区にまわったが、3年連続の区間賞を獲得した。箱根駅伝(97年)は全日本で初優勝に輝いた神奈川大が初栄冠。当時の神奈川大に10000m28分台はゼロだった。

 一方、当時の日本学生記録は前年に大学を卒業した早大・渡辺康幸(現・住友電工監督)で27分48秒55。記録会ではなく、イェーテボリ世界選手権の予選で出したもので、すこぶる価値が高かった。

20年前(2001年)の学生トップ10は?

 2001年度は5年前と比べて、日本ランキング100位のタイムが7秒66上昇。箱根ランナーたちの記録も向上した。

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