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プロ野球スカウト「プロのセカンドをアマのセカンドから探す必要があるのか」が変わる? 来年ドラフト有力候補の大学生「二塁手」6人
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/11/07 17:03
来年ドラフト有力候補の大学生二塁手【6】立教大・山田健太(183cm85kg・右投右打・大阪桐蔭高)
(5)青山学院大・山田拓也(169cm73kg・右投左打・東海大相模高)
「強肩二塁手」といえば、山田拓也(青山学院大)も間違いなくそのくくりに入ってくるが、彼と駒沢大・林については、肩だけではとても語れない。走・攻・守すべてに野球センスの塊。この選手を見るだけのために、朝早く起きて、球場に向かえる。
「野球センスの塊」って、なんだ?と問われれば、それは「実戦力」の高さだ。
2死一塁でライトポール下に打球が飛ぶ。バックホームのカットの位置に入った山田拓也、右翼手の処理がもたつくのを見て、一転、とっさの三塁へのストライク送球で打者走者を刺す。
カットプレーでのロングスローの敏捷性と高い精度も舌を巻くが、併殺プレーで、遊撃手がベースに入るのが遅れると、一瞬、送球動作を止めて待てる「間」の作り方など、教わってできることじゃない。それでいて、ピンチには、きちんと打球の正面に入って、抜群の野球センスでもそれに溺れることがない。
この体格で「青学」の左打者といえば、誰か思い出さないだろうか……オリックスの4番打者・吉田正尚だ。
山田に「吉田正尚」の匂いがするのは、狙ってホームラン、長打を打てるからだ。どう見ても、狙って打っているとしか見えない打席が幾度かある。
打者・山田拓也は、一度打席に入ると、打席を外さない。ごちゃごちゃ動かず、すぐに構えを整えて、「さあ、いつでも来い!」と次の投球を待ち構える。
今の時代、用もないのにいちいち打席を外してベンチを見る打者ばかりなのに、山田拓也の打席は爽快で潔い。こういう打者は、必ずいつも、自分の「最大値」を狙っているものだ。この相手なら、外野を抜ける……今日のピッチャーなら、ホームラン狙えるぞ……と。
10月28日の日本大戦、同点の9回2死ランナーなし。コロナルールで延長戦はないから、ここでホームランを狙わずに、いつ狙う……そんな場面だ。
セフティバントのジェスチャーを2球続けて、セーフティなんかやるわけない場面だ。何か、仕掛けている……と、思う間もなく、次のカットボールを見事なまでのタイミングで捉えて、ライトポール際の中段にまで持っていったから驚いた。
毎年3割前後をマークして、ホームランも15本~20本。楽天・鈴木大地内野手のような打者に台頭していくのではないか。そこに実戦力抜群の守備力が加わるのだから……そんな「二塁手」、今のプロ野球には見当たらない。