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不安露呈プレミア6強が低調 最強の伏兵レスターが優勝しても“おとぎ話再現”ではない理由
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/11/25 06:00
いまだ決定力十分のバーディー。ロジャース監督率いるレスターは前回優勝時のような“超アウトサイダー”ではないのは確かだ
並外れたスピード、パワー、運動量を装備し、なおかつ状況判断にも優れるディディは、ひとりで複数のミッションをこなせる稀有なタレントだ。守備面では最終ラインの前を封鎖し、マイボールの際にはビルドアップ、ラストパスに関与する。この男こそがレスターのダイナモであり、筆者の認識ではすでにアンカーの第一人者である。
「5+4ブロック」で守り切る基本戦略
それほどの男を起用できないのなら、4-1-4-1にこだわる必要はない。ロジャーズは自らが志向するポゼッションスタイルを捨て、堅守速攻に活路を見いだした。前方からのプレスは控え、自陣で5+4のブロックを築く迎撃態勢を基本戦略に用いたのである。
3節、シティが多くのミスを犯したとはいえ、カウンターに徹して5-2の大勝。6節もアーセナルを1-0で破り、7節のリーズ戦も4-1の快勝を収めている。いずれの試合も、対戦相手のベクトルがゴールに向かい、守備意識がやや薄くなった瞬間を見逃さず速攻で仕留めてみせた。
33歳バーディー、未だ衰えぬ俊足と嗅覚
なるほどレスターは、カウンターに適した選手も揃えている。
ジェイミー・バーディーは33歳という年齢が信じられないほど瑞々しく、相手DFラインとの駆け引きを楽しそうに繰り返す。両ワイドのジャスティンとハーベイ・バーンズも走力が抜群で、彼らの豊富な運動量が攻撃に幅を持たせているといって差し支えない。
ボールを動かすことに長けているレスターが、プランBとしてカウンターを手にしようとしている。3月から戦列を離れているR・ペレイラは12月初旬、ソユンジュは12月下旬、ディディは年明け早々に復帰する予定だ。各チームが年末年始の過密日程で疲弊するとき、レスターが万全の体制を整えたとしても不思議ではない。
昨シーズンも、最終盤に主力の怪我が相次ぎさえしなければ、チャンピオンズリーグの出場権を確保していたはずだ。
11月22日の9節リバプール戦で0-3の苦杯を舐めたが、今シーズンのパフォーマンスを踏まえると、レスターはビッグ6の牙城を崩しつつあるといって差し支えない。
“2度目の奇跡”、“おとぎ話の第2章”、 いやいや、レスターのリーグ優勝は奇跡でもおとぎ話でもない。現実的な目標だ。