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不安露呈プレミア6強が低調 最強の伏兵レスターが優勝しても“おとぎ話再現”ではない理由
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/11/25 06:00
いまだ決定力十分のバーディー。ロジャース監督率いるレスターは前回優勝時のような“超アウトサイダー”ではないのは確かだ
アーセナルは、永すぎるアーセン・ベンゲル体制の影響により閉塞感に支配されていた。トッテナムはモダンフットボールで高く評価されたものの優勝するようなレベルにはなく、シティはシーズン終了を待たずにジョゼップ・グアルディオラ監督の招聘を発表したため、選手から覇気が失われた。
ユナイテッドは補強がことごとく失敗して、チェルシーはジョゼ・モウリーニョ監督(当時)の度重なる舌禍が内部崩壊を招き、優勝争いにすら参戦できなかった。
リバプールに着任したばかりのユルゲン・クロップ監督がプレミア特有のプレー強度に舌を巻いていた、2015-16シーズンの話である。
おとぎ話から5年後、主力を失っても4位
その間隙を縫って、レスターが優勝した。
前年、命からがら残留を果たしたチームの快挙は、“おとぎ話”とも表現される異例中の異例であり、後世に語り継がれる奇跡的偉業ともいわれている。そう、おとぎ話であり、奇跡なのだ。繰り返されるはずがないと……。
今シーズン、レスターは本稿執筆時点では4位だ。
ウィルフレッド・ディディ、チャグラル・ソユンジュ、リカルド・ペレイラなどの主力が負傷のため戦列を離れ、不動の左サイドバックだったベン・チルウェルはチェルシーに移籍した。不安は小さくなかった。
だが、ブレンダン・ロジャーズ監督は冷静だった。アクシデント後の対応が迅速で、的を射てもいた。ウェスレイ・フォファナとティモチー・カスターニュの獲得で守備陣の穴を埋め、ジェイムズ・ジャスティン、ジェンギス・ウンデルといった若手の抜擢により、ディディ欠場後も柔軟な発想でピンチを切り抜けている。
「いずれワールドクラスの中盤センターになる」
誰もが高い評価を下すディディが、9月23日のアーセナル戦(リーグカップ3回戦)で鼠径部を痛めて長期離脱。ハムザ・チャウドリー、ナンパリス・メンディで補填する案もあったはずだが、ロジャーズは基本陣形を4-1-4-1から5-4-1に変更して対応する。