“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
南野拓実、中島翔哉が聞いた大合唱。
震災後のU-17W杯で体験した「世界」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byMEXSPORT/AFLO
posted2020/04/15 11:50
南野(9番)らが挑んだ2011年U-17W杯。準々決勝でブラジルに惜敗するも、会場には「ハポン」コールが鳴り響いた。
ヒデ、松田らを擁した'93年以来。
グループリーグ初戦のジャマイカ戦はポゼッション率62%、シュートは15本(ジャマイカは5本)も浴びせ、1-0で勝利。強豪フランスを迎えた第2戦でもポゼッション率は62%を記録し、シュート本数もフランスの12に対し、13と上回った。1-1のドローに持ち込み、これで決勝トーナメント進出をほぼ手中に収めた。
第3戦のアルゼンチンに対しては、スタメン7人を入れ替えながら3-1の快勝。この勝利で中田英寿、宮本恒靖、松田直樹、戸田和幸らを擁した1993年日本大会以来となる、18年ぶり2度目の決勝トーナメント進出の快挙を成し遂げた(国外大会では史上初)。
大会前、日本国内ですらメディアで取り上げられることは少なかったが、「94ジャパン」の1位通過を機に、一気に露出が増えていった。
支援への感謝の思いを横断幕に。
ラウンド16(決勝トーナメント初戦)のニュージーランド戦でもその勢いは止まらない。ポゼッション率は60%で、シュート本数はニュージーランドの7倍近い26本と圧倒。エース南野の大会初ゴールも決まり、6-0の完勝。'93年大会に並ぶベスト8進出を果たした。
この試合後、94ジャパンの選手たちは全員で大きな横断幕を手に場内を一周した。この幕に書かれていたのは、『To Our Friends Around the World Thank You for Your Support』(原文ママ) 。東日本大震災で世界中から温かい支援を受けたことに対する感謝の言葉だった。これでさらに地元メキシコの人たちの心を完全に掴む。スタンドからは割れんばかりの拍手がわき起こり、「ハポン(ジャパン)」コールも起こった。
この光景は翌日の地元紙にカラーで大きく取り上げられ、母国が災害を受けながらも、逞しく、異国の地で戦う高校生たち――ヤングジャパンを称えた。もちろん、冒頭に登場したタクシーの運転手にもその熱は伝わったようで、「1試合観に行ったよ。本当にいいチームだよね」と興奮気味に話していた。