“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
南野拓実、中島翔哉が聞いた大合唱。
震災後のU-17W杯で体験した「世界」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byMEXSPORT/AFLO
posted2020/04/15 11:50
南野(9番)らが挑んだ2011年U-17W杯。準々決勝でブラジルに惜敗するも、会場には「ハポン」コールが鳴り響いた。
満員の会場で、優勝候補ブラジルと。
2011年7月3日、初のベスト4入りをかけた準々決勝。決戦の地はメキシコ中央部にあるケレタロ。街の中心部全体が世界遺産となっている歴史ある場所でブラジル戦は行われた。日本からもサポーターは駆けつけたが、地元民たちも多く足を運び、会場のエスタディオ・コレヒドーラには3万123人の大観衆が集まった。会場の雰囲気は、躍進を続けるヤングジャパンを後押ししていた。
スタメンはGK中村、DFラインは左から室屋、植田、岩波、川口尚紀(柏レイソル)、アンカーに深井を置き、喜田と石毛の2シャドー、3トップは左から早川史哉(アルビレックス新潟)、南野、秋野央樹(V・ファーレン長崎)と、ベストメンバーの布陣で臨んだ。
だが、対するブラジルも、現在パリSGで守備の核を担うマルキーニョス、チェルシーで活躍するDFエメルソン、そしてガンバ大阪でプレーするFWアデミウソンらを擁した優勝候補である。これまでの戦いぶりが嘘かのように、厳しい戦いとなった。
ミスが続出、気づけば0-3。
「迫力にのまれてしまった」と植田が語ったように、立ち上がりからハイプレスと圧倒的な個人技で襲いかかってきたブラジルに対し、日本は後手に回った。
16分、右CKからマークのズレを突かれて失点を喫すると、ブラジルはさらにプレスを強め、日本のパス回しを寸断。ブラジルの圧力と試合前に降った雨の影響でぬかるんだピッチに苦戦し、日本はらしくないミスが続いた。
さらに後半立ち上がりの48分。左からの折り返しをCB植田がぬかるんだピッチに足を取られ、クリアミス。クロスはフリーのアデミウソンに渡り、豪快なシュートを決められた。60分にはミドルシュートのこぼれ球をFWアドリアン(アヴァイ)拾われ、強烈なシュートでゴールを射抜かれた。
ブラジルに対して、0-3。万事休す。
しかし、満員に膨れ上がったスタジアムのファンは「ハポン、ハポン」と大声援を送ってくれた。