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アイルランド撃破は奇跡ではない。
日本の信念と4年間積み重ねたもの。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2019/09/29 12:00
ノーサイドの瞬間、日本代表フィフティーンは喜びを爆発させた。
アイルランドはピタリと足が止まった。
フォワードの力強い前進が相手の足を止め、素早いテンポのパス回しでトライをもぎ取った。アイルランドをはっきりと攻略したのである。田村のゴールも決まり、16対12とリードを奪う。
残り時間はまだ20分以上ある。アイルランドは立て続けにリザーブの選手を投入してくるが、ピッチ上の色彩は変わらない。
「後半20分になって相手はピタリと足が止まったけれど、こちらは足を止めずにプレッシャーをかけ続けた」と稲垣が振り返ったように、日本はゲームをコントロールしていく。田村のペナルティゴールで71分にも3点を加え、19対12でアイルランドを撃破したのだった。
「しんどいことをやってきた」
「自分たちの信念を貫いて、自分たちが目ざすことに向かっていった。それが一番の勝因だと思う。この試合に向けて、かなり時間をかけて準備をしてきた。去年から、いや、(HC就任後の)3年間をかけて、この試合に焦点を当ててやってきた」
試合後の記者会見場に拍手で迎えられたジョセフHCは、積み重ねてきたものの大きさと重さを強調した。指揮官の言葉を、ふたりのベテランが補足する。
「('15年W杯後に)ティア1の全チームと試合をしてきた。それが自信につながっています」と、38歳のトンプソンは言葉に力を込めた。
56分から出場したスクラムハーフの田中史朗は、「全員が最後まで走れていた。宮崎、北海道での合宿がなければ、ここまで相手を追い詰めることもなかったと思う。しんどいことをやってきたし、(15年以降の)この4年間がなければ今日の試合もなかった」と、スタッフを含めたチーム全体のハードワークを称えた。