ラグビーPRESSBACK NUMBER
アイルランド撃破は奇跡ではない。
日本の信念と4年間積み重ねたもの。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2019/09/29 12:00
ノーサイドの瞬間、日本代表フィフティーンは喜びを爆発させた。
福岡のメンバー入りは試合当日だった。
9月6日の南アフリカ戦で負傷した福岡は、26日に発表されたメンバーでリザーブにも入っていなかった。ウィリアム・トゥポウのケガでレメキロマノラヴァがスタメンへ昇格し、福岡が23番を着けることになったのは試合当日だった。
アイルランドを攻略するには、ポゼッションからの前進が欠かせない。プールAのワールドランキング最上位に3対27で敗れたスコットランドは、スクラムやモールで押し込めないためにキックに頼らざるを得ず、ディフェンスのリアクションが早いアイルランドに主導権を持っていかれた。
フォワードが力負けしなかった。
この日の日本は違うのだ。前半からフォワードが力負けすることなく、スクラムやボールの争奪戦で優勢に立つ。相手のペナルティも誘っていった。
「フォワードのところで前に出られるかどうかが大事だと思っていたので、そこの勝負で勝てたのは作戦どおりというか、それによってかなり勢いが生まれたのはありました」と姫野和樹は言う。
ロシア戦に続いて頼もしいボールキャリーを見せたフランカーの肌触りどおりに、日本の圧力はアイルランドのディフェンスに亀裂を生じさせていく。
58分だった。敵陣でのスクラムを起点にアタックを継続し、左大外で待つ福岡へボールがわたる。
パスをつないだラファエレ ティモシーとは「あうんの呼吸」が成立しており、「絶対に放ってくれるのは分かっていたので、信頼して走り抜けるだけだった」と、快速のフィニッシャーはインゴールへダイブする。急きょメンバー入りした男が大きな、大きな仕事をやってのけた。