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「僕は2回もドラフト指名を拒否している…その怖さがある」長野久義が告白した…巨人スカウトの証言「ドラ1の2人、長野と大田泰示は性格が正反対だった」
posted2025/11/02 11:02
10月14日、巨人・長野久義(40歳)の引退会見
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中溝康隆Yasutaka Nakamizo
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AFLO
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<気遣いの人・長野は、こと野球にかんして言えば、頑固だった。中学校に上がるとき、どうしても硬式野球をやりたくて、「中学校の部活でじゅうぶんだ」という父親の反対を押し切り、硬式野球チームの筑紫野ドリームズへ入る。その結果、中学3年間、ほとんど父とは口をきかなかったという。>
「長野は大田泰示と正反対で…」
「2年前にジャイアンツに恩返しがしたいという理由で北海道日本ハムの指名をおことわりしていましたし、こうしたことから目をそむけて自分のことだけを考えて決めることは、僕の信念に反することでした。先述したように1年でも早くプロに行きたい気持ちはありましたが、そこで千葉ロッテに入ってしまっては筋が通らない。それが決め手でした」(長野久義 メッセージBOOK―信じる力―/廣済堂出版)
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だが、いざ念願の巨人に入っても、自身の打撃スタイルについて周囲から度々指摘を受けた。巨人のドラフト1位選手には、コーチだけでなく、多くのOBや評論家がアドバイスを送りたがる。2008年のドラフト1位大田泰示は、真面目な性格で、あらゆる助言を聞こうとするあまり、自分のバッティングを見失ってしまったという。しかし、長野はプロ野球選手として、誰に何を言われようが、頑なに自分のスタイルを守り続けた。
「長野は大田(泰示)と正反対で、周囲のアドバイスや指導をいい意味で聞き流せる図太さを持っていました。入団当初にあった『ホームベースから離れて構えすぎじゃないか?』という指摘にも耳を傾けませんでした。社会人で3年間結果を残してきた自負もあったのだと思います。長野は私にもはっきりと『何を言われても右耳から左耳にスルーしています』と言っていました」(ジャイアンツ元スカウト部長のドラフト回想録/長谷川国利/カンゼン)
「2回もドラフト指名を断っている…その怖さがある」
もちろん、そういう姿勢のすべてがプラスだったとは言えないだろう。16年間で通算1512安打、163本塁打というドラフト1位に恥じない素晴らしい数字を残したが、意外なことに打率3割は3年目の2012年が最後で、20本塁打を超えたシーズンは一度もない。

