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“活字野球”で味わう日本Sとドラフト。
プチ鹿島10月のスポーツ新聞時評。 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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photograph byHideki Sugiyama

posted2016/11/01 11:30

“活字野球”で味わう日本Sとドラフト。プチ鹿島10月のスポーツ新聞時評。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

死球を受けて激昂する日本ハムの岡と、彼をなだめようと必死の広島・石原。

ドラフトの情報戦の“痕跡”を確認したい。

 ドラフト本番。

 注目の田中正義は5球団の入札となった。予想されたなかで最小の数であるが、ここに私は情報戦の“痕跡”をみたい。

 各紙で「田中正義」「佐々木千隼」指名と予想されたヤクルト、楽天はそれぞれ寺島成輝、藤平尚真を一本釣りした。さらに注目したいのは西武と中日だ。スポニチで「今井達也(作新学院)の一騎討ち」と書かれたが、結果は西武の単独指名。中日は柳裕也(明大)を指名。

 ドラフト後の中日の裏話が興味深い。

《前日まで決めていた1位指名は、抜群の速球にホレ込んでいた作新学院の今井。だが、西武の指名情報をキャッチすると翻意した。》(東京中日スポーツ・10月21日)

 この部分、当日のスポーツ新聞全紙を読んでいれば「中日はスポニチを読んで作戦を変更した?」という想像も楽しめる。

ドラフト前に流れる「怪情報」を味わう。

 今年最大のサプライズは佐々木千隼(桜美林大)だった。

 前評判では田中正義にも劣らない評価と競合予想をうけていたが、最初の入札でまさかのゼロ! 完全ウエーバー方式なら2番目に消えていたであろう選手が12球団一巡しても残っているという珍事。

 これも情報戦の結果だろう。各球団の腹の探り合いを堪能できる今のドラフト方式が私はやっぱり好きだ。

 腹の探り合いといえば、ドラフト前の「怪情報」記事も味わいのひとつ。一時は全球団入札といわれた田中正義に、夏頃からタブロイド紙を中心に疑心暗鬼な記事が出ていた。それは田中の右肩痛をめぐる解釈である。

「日ハム“撤退”か? 創価大・田中正義『右肩痛』の深刻度」(日刊ゲンダイ・8月31日)

《田中の右肩に関してはどこよりも詳しく状態を把握しているはずの日本ハムのスカウトの姿が現場になかったことが他球団を疑心暗鬼にさせた。「当日は僕も含めて9球団が田中の右肩をチェックしに来たのですが、節目には必ずといっていいくらい顔を見せる日本ハムのスカウトを見かけなかったのです。(略)ひょっとして見切りをつけたんじゃないか、右肩は一時的に回復しただけで実は深刻なんじゃないかとウワサになったのです」(ある球団のスカウト)》

【次ページ】 日本ハムが指名すれば「田中の右肩は問題なし」。

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