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実力派揃いの2012年入団組から、
球団事情を加味して新人王を大予想。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/01/12 10:30
ロッテのドラフト1位左腕・藤岡貴裕の東洋大での通算成績は、49試合登板で27勝9敗、防御率1.31。レベルの高い東都大学リーグでの抜群の実績を引っ提げ、プロ1年目から先発ローテーションの一角を狙う
藤岡の同僚の鈴木も出場機会さえあればチャンス十分。
鈴木も遊撃手不在のチーム事情が幸いしそうだ。昨シーズン、ロッテの遊撃を守った選手は8人。これは12球団で最も多い。2番目に多い広島(7人)は木村昇吾が86試合遊撃を守っているので今季のレギュラーのメドが立つが、ロッテは最も多く遊撃を守っているのが根元俊一(28歳)と渡辺正人(32歳)の42試合と、まるで固定できていない。2人の年齢を見ても鈴木がここに割って入るチャンスは十分ある。
技術面では、走塁と守備がとくにいい。打者走者としての各塁到達は全打席全力疾走を実践し、守備は捕ってから投げるまでがとにかく速い。打者走者が俊足で、アウト・セーフが微妙と思われるゴロに対しては余分なステップ、テークバックを省いて、ノーステップ、ノーモーションで投げる。実戦的なプレーに特徴がある東都大学リーグでも、これほど攻撃的なディフェンスをする内野手は鈴木くらいである。この走守のよさはプロでも通用する。
中村と川原はエースが抜けた穴を埋められるか。
対抗と大穴は最初、日本ハムの中村とソフトバンクの川原にした。中村はダルビッシュ有、川原は杉内俊哉、和田毅、ホールトンがいなくなる台所事情が、2人にとってプラスに作用すると思ったのだ。しかし、昨年のファームの成績を見て考えを変えた。
中村……18試合、100.2回、8勝5敗、防御率2.59、奪三振61、与四球35
川原…… 8試合、26回、1勝1敗、防御率2.42、奪三振18、与四球15
イニング数に対して奪三振が少ないのがわかる。過去5年、プロに在籍して新人王を獲得した投手は3人いて、彼らのファーム時代の成績を見ると共通して奪三振が多く、与四球が少ない。その3人、山口鉄也(巨人)、小松聖(オリックス)、榊原諒(日本ハム)の新人王を獲得する前年と、伏兵と大穴に挙げた乾、榎下(ともに日本ハム)の昨年のファーム成績を紹介する。
'07年・山口……15試合、19.2回、1勝1敗、防御率1.37、奪三振22、与四球4
'07年・小松……26試合、40回、0勝3敗6S、防御率3.15、奪三振49、与四球7
'09年・榊原……30試合、57.2回、4勝3敗3S、防御率4.37、奪三振57、与四球14
'11年・乾………33試合、31.2回、2勝1敗1S、防御率1.14、奪三振39、与四球9
'11年・榎下……33試合、48.1回、4勝2敗1S、防御率1.68、奪三振55、与四球14
奪三振率は8~10、与四球率は1~2が、新人王に共通する数字と言っていい。日本ハムはダルビッシュが移籍すれば先発陣の完投数が減り、その分リリーフ陣の仕事が増える。そういう需要にもリリーフタイプの乾と榎下はぴったり合っている。