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阪神ドラ1のジンクスを払拭できるか。
“ポスト金本”伊藤隼太が懸ける想い。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/01/11 10:30
「ケガなくシーズン1年やること、開幕1軍」を目標にしているという伊藤隼太。和田豊新監督の期待に応えられるか?
「先のことは考えずに目の前のことをやっていって、(新人王などプロでの成果は)その結果だと思っています」
慶應大から阪神にドラフト1位で入団した伊藤隼太は、入団会見の場でプロでの目標をそう答えた。
「大学ナンバーワンスラッガー」と呼ばれた長打力に加え、守備力も高く足も速い。さらには、新人の体力測定で見せた抜群の身体能力から、周囲からは早くも「ポスト金本」と呼ばれ、和田豊新監督も今春のオープン戦では上位打線での起用を示唆するなど、伊藤に対する期待は日に日に高まっている。
伝統球団、Aクラスの常連、熱狂的なファン……。枕詞を付ける際、様々な形容が付けられるほど圧倒的な人気を誇る阪神というチームにおいて、これまで彼のようなルーキーが大勢入団しては淘汰され、実績を残せぬまま球団を去っていった。
ジンクスと対峙する伊藤が希望を抱かせる理由。
だが、伊藤でならば阪神に漂う悪しき大物ルーキーのジンクスを払拭してくれるのではないか、と希望を抱かせるものがある。
それは、野球に取り組む姿勢。彼は誰よりもこのことを強く意識し、日々、研鑽を積んできた。
「別に、他人に見てもらおうとは思っていないですし、たとえ見られていたとしても、練習なら率先して誰よりも量をこなす。野球に取り組む姿勢だけは、自分の置かれる立場が変わろうとも変えたくない部分ですね」
大学時代、キャプテンに任命された直後に自分に言い聞かせるように強い意思を示してくれた。そして彼は、こうも付け加えた。
「本当に僕、負けず嫌いなんです。なんでも、人には負けたくないんですよ」
例えば、円周率の小数点以下115ケタまで暗記しているというユニークな特技を持っているが、これにしても中学の同級生に負けたくない一心で覚えたもの。テストにしても、高得点を叩き出しても自分よりも順位が上の人間がいれば満足できない。だから勉学にも可能な限り心血を注ぎ、高校時代は学年トップを勝ち取ったこともある。