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「“育成なら1位で獲る”という球団もありました」仙台育英、ドラフト指名漏れのウラ側…高校生が異例の“指名漏れ会見”、須江監督「すでに10件電話がきてます」

posted2025/12/10 11:06

 
「“育成なら1位で獲る”という球団もありました」仙台育英、ドラフト指名漏れのウラ側…高校生が異例の“指名漏れ会見”、須江監督「すでに10件電話がきてます」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

仙台育英高校で「スケール感は過去イチ」と絶賛された高田庵冬。筆者はドラフト前から彼を取材した

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 かつて大谷翔平よりも“天才”と呼ばれた同世代がいた。天才たちは、30歳になってどうなったのか? 彼らの現在を追った書籍『さよなら、天才 大谷翔平世代の今』が発売され、話題になっている。
 その筆者が今年のドラフト当日に見た、“指名漏れの現実”。数十秒の沈黙……高校野球の名将はそのとき何を語るのか? 仙台育英高校で「スケール感は過去イチ」と絶賛された逸材に密着した。【NumberWebノンフィクション全4回の最終回/第1回第3回も公開中】

◆◆◆

 4巡目ともなるとさすがに他の選手の名前が読み上げられるたびに3人の顔が硬直していくのがわかった。それでも選手2人はポーカーフェイスを貫いていたが、須江航はときおり目をつむって祈るような表情を見せた。

 6巡目になると、指名を終える球団が少しずつ出始める。7巡目指名を行ったのは5球団に止まった。そして、その5球団も8巡目は指名を見送った。

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 2025年の支配下指名は全部で73名だった。プロ志望届を提出した高校生は全部で124名いたが、そのうち支配下枠における指名までたどり着いたのは19名だった。改めて狭き門であることを実感する。

 須江は指名がかなわなかった高田庵冬と吉川陽大、そして見守った部員たちにこう語りかけた。

「最初にも言いましたが、志望届を出すレベルになったこと、そして、調査書がたくさん届いたということが尊いわけであって。指名された選手と比べて、2人の力は何ら劣っていないと思っています。ドラフトは縁なので、その縁がなかっただけで、何ら恥じることはありません。逆に、ここから自分の人生がおもしろくなると思えたら、夢が叶うと思うので、そういう前向きな気持ちでがんばって欲しいなと思っています」

異例の“指名漏れ会見”

 須江の話を聞きながら、ふと思った。会場には会見用の机とイスがすでにセッティングされていた。果たして、高田と吉川は取材を受けるのだろうか、と。指名会見はあっても、指名漏れ会見というのは、あまり聞いたことがない。チームによっては指名漏れした選手の心境を慮り、取材対応なしというケースも珍しくなかった。

 ただ、そこはいついかなるときも取材対応を疎かにしない須江らしかった。

「このあと、記者のみなさんもひと言、話をしたいと思うので、その対応をしてもらって……」

【次ページ】 異例の“指名漏れ会見”

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