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「マキノらに弓矢ポーズ、パクられた(笑)」名ブラジル人FWウェズレイは今、代理人に「貧困家庭の子が多いから学業を。ただ、これがツラいよ」
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沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2025/11/16 11:02
現在は代理人業に携わるウェズレイ。サンフレッチェ広島時代のユニフォームを着て「弓矢ポーズ」
「2014年からブラジルサッカー連盟の代理人のための講座を履修し、2015年、6歳年下の弟ラミーロ、知人と3人で代理人事務所ビッチブル(PT Ball)を設立した。2017年には、MFフィリペ・シウバの広島移籍を扱った。現在、プロ選手3人、10代の若手選手15人のキャリアをサポートしている」
――代理人業の醍醐味と難しい面は?
「才能のある若手を発掘し、本人だけでなく家族とも連携を取ながら、一人前のプロ選手へ育て上げることだね。若い選手たちはみんな、自分の息子のように可愛いよ。ただ貧困家庭出身の子が多いから、彼らがフットボールを続けるためには家族全体に経済的な援助をしなければならないことがある。それでも、選手として必ず成功する保証はない。だから、学業を続けるように諭している。それだけ手を尽くしても、代理人の契約期間が過ぎると別の代理人へ乗り換えられることがある。これがつらいところだ」
6人の子供がいるよ
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――ちなみに、ご家族は?
「下は15歳から上は29歳まで、男4人、女2人の6人の子供がいる。次男ウェズレイ・ジュニオールが、かつて僕が監督を務めたラガルトでCFとしてプレーしている」
――2004年から2007年まで名古屋、広島、徳島、岐阜でFWとしてプレーした14歳年下の弟ジョルジ—ニョは今、どうしていますか?
「2020年に現役を引退し、数年前からカナダに住み、トロントで指導者養成コースを履修して、ゆくゆくは指導者となることを目指している」
――現役引退後の日本との縁は?
「プライベートの旅行を含めて4度、日本を訪れた。2015年、名古屋でチームメイトだった中村直志の引退試合でプレーした。昨年12月には、大分トリニータの創設30周年記念試合に出場。西川周作(現浦和レッズ)、高松大樹、エジミウソン、マルケスらと一緒にプレーできて、本当に楽しかった。クラブ関係者、ファンとも会えて、嬉しかった」
――現在でも、ボールを蹴っていますか?
「地元で元プロ選手からなるチームを作っていて、ジュニーニョ(元川崎フロンターレ)もメンバーの一人なんだ。週に一度、試合をして楽しんでいるよ」
――今後の目標はなんでしょうか。
「もっと多くの、さらに優れた選手を育て、いずれは日本へも選手を送り込みたい。かつて僕がプレーしたクラブで活躍してくれたら、最高だね」
1991年から2010年まで18年間に渡ってプレーした。若い頃はボランチ、SB、CB、MFなどGK以外のすべてのポジションをこなし、25歳になってからFWへ転向。CFとして大輪の花を咲かせた。
引退後、一時は指導者の道を志したが、10年前から選手の代理人として若い選手の面倒を見ている。なおかつ、毎週、同郷のジュニーニョを含む元プロ選手のチームでプレーしてゴールを決め続ける……。53歳になっても、この男はフットボールにどっぷり浸かっていた。〈第1回からつづく〉


