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「クロップの手腕に問題? ノーだ」遠藤航所属リバプールが再建を託した“不運すぎる名将”…「彼らのお陰で僕はここにいる」と感謝した日
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ジェームズ・ティペットJames Tippett
photograph byChris Brunskill/Fantasista,Getty Images
posted2025/08/03 17:00
遠藤航を労うクロップ監督。現代最強を誇るリバプールはどのようにして低迷期から再建したか
クロップがリバプールの監督にふさわしいかどうかを判断するために、xGデータを参照するだけで十分だったからだ。シーズンを通してxGを積算した場合、ドルトムントは実際の得点数よりもおよそ7点多くゴールを決め、失点も9少ないはずだった。成績も7位に終わったものの、本来は2番目に好調なパフォーマンスを維持していた。グラハムは、2019年初めにこう語っている。
「ドルトムントは本当に不運だったと思う。(7位になったのは)選手や監督が構造的な問題を抱えていたからではない。ユルゲンを新監督として雇いたいのであれば、彼らの手腕に問題があったのかどうかを確認しなければならない。統計分析は、その答えがノーであることを明確に、そして力強く示していた」
「彼らのお陰で、僕はここにいるんだ」
リーグ戦で7位に沈んだとはいえ、グラハムは不本意な成績が実際のパフォーマンスを反映していないことを見抜いていた。2014/15シーズンのクロップは、最近のサッカー史で最もツキに見放されたチームをたまたま率いていたにすぎない。(注:イアン・グラハムの分析によれば、クロップ率いるドルトムントは、過去10シーズンのブンデスリーガにおいて「2番目に不運なチーム」だったという)
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ちなみにクロップ自身は、ドルトムント時代はデータ分析を活用していなかった。多くの同業者と同じように、彼はトレーニング・グラウンドや試合会場でチームを指導することで手一杯になっていたからだ。
しかしグラハムが監督室を出る頃には、クロップはxGに全面的な信頼を寄せるようになっていた。やがてクロップは、グラハムたちが緻密なデータ分析(※追記:第2回以降で触れるモハメド・サラーやビルヒル・ファンダイク、さらに遠藤航らもこの分析を経てチームの一員となる)をしていなければ、自分がリバプールの監督に招かれることもなかったと公言するようになる。
曰く、「彼らのお陰で、僕はここにいるんだ」〈つづく〉

