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「E-1は日本の人々にとって重要なのか?」“観客687人の日本代表戦”をトルシエが一刀両断「香港戦後半のテンポはJリーグを見ているよう」
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田村修一Shuichi Tamura
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2025/07/14 17:01
“観衆687人”が話題になったE-1選手権の香港戦。トルシエが本音で一刀両断する
「それはどうか。前半のメンバーとプレーの内容が、ひとつの基準になるのではないか。韓国は日本と同じレベルにあるのだろう。彼には10数人の頼れる選手がいて、好き放題やるとは思えない。優勝するために最善を尽くすはずだ。この大会がどうであれ、日本の人々は……。E-1は日本にとって重要な大会なのか?」
――正直に言って、アジアカップほどの重要性はありません(※香港戦の観衆は687人)。東アジアの大会で、出場選手も規定ではないものの国内組に限られていますから。
「しかし地域のヘゲモニーを握るという点では重要ではないのか。30歳のベテラン(ジャーメイン)を敢えて起用するのは、W杯のための準備とは違う。世代交代のための起用でもない。経験豊富なベテランで臨むのは優勝するためであって、新しい選手の発掘でもない。
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彼が若手を多く招集したのは、代表と大会の雰囲気を彼らに経験させ、グループとして気持ちを分かち合うためだろう。ただ主力となるのはベテランたちで、そんな中で若手といえる宮代はとても興味深かった。彼以外は、年齢が上か若すぎるかのどちらかだった」
カキタ、ナガトモについては…
――しかし例えばあなたもよくご存じの細谷真大は、今日はプレーしませんでした。
「そうだが、私には垣田裕暉も興味深かった。積極的にプレスをかけ、献身を惜しまなかった。
ただ、ジャーメインのクオリティとはちょっと違う。彼はまさにヨーロッパタイプの選手だ。ポジショニングにセンスが感じられる。日本の選手にはない動きの質の良さがある。とりわけ4点目は素晴らしかった。古賀から川辺駿、垣田と渡りジャーメインが決めた。4人がワンタッチで得点に結びつけた。なかでもジャーメインのフィニッシュは卓越していた。練習時間はほとんどなかったにもかかわらず、そこにはオートマティズム(連動性)が確かにあった。なぜそこまでできたのか、私にはわからないが。
それに対して後半は、練習不足のチームの姿そのものだった。前半の連係はまったく失われた。だから評価すべきは前半であって、第2戦と第3戦も前半のチームに依拠すべきだ。森保もそこを踏まえて大会を勝ちに行くだろう」
――香港戦では起用しなかった長友佑都の起用も、チームに刺激を与えるためのいい機会になるかもしれません。
「長友のピークはすでに過ぎたが……」〈つづく〉

