- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
「カブス今永昇太は9位に上昇」センバツ球児が選ぶ“好きなプロ野球選手”ベスト10「なぜ1位は大谷翔平でなく鈴木誠也だったのか?」理由を考察
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph byNanae Suzuki
posted2025/03/23 11:01

MLB開幕戦で来日したドジャースの日本人選手たち
2017年に都城高校からオリックスに入団した由伸は、プロでは恵まれた体格とは言えない。学生時代から注目されていたが、大谷ほどの脚光は浴びておらず、ドラフトも4位指名だった。努力で這い上がってきたイメージもあるだろう。
21年にオリックスを25年ぶりの優勝に導くと、翌年の人気投票では8位に。以降も7位、4位と着実に順位を上げた。メジャー移籍すると、日本在籍時と比べて目にする機会が減るため、ランクダウンする傾向はある。吉田正尚はオリックス時代の22年、メジャー生活をスタートさせる23年も1位だったが、昨年は4位、今年は6位と下がっている。
ただ、由伸は大谷と同じドジャースであり、報道量は他チームのメジャー選手に比べれば多い部類に入る。それにもかかわらず、なぜ4位から46位と急激にダウンしたのか。
ADVERTISEMENT
可能性として挙げられるのが、由伸の唯一無二といえるトレーニング法、そして投球フォームだ。
“真似できない”山本由伸の投球
由伸はやり投げ、ブリッジなどの練習法を取り入れ、ほとんどの主力選手が取り組むウエイトトレーニングをしないことで知られる。
さらに、一見やり投げのように腕を開き、左足をすっと前に出す独特のフォームが特徴だ。このフォームを昨年春に中日の髙橋宏斗が真似するも断念。これによって、由伸の特殊な才能が証明されてしまった。しかも、宏斗は昨年1.38という驚異的な数字で最優秀防御率のタイトルを獲得している。そのピッチャーができないのだから……と球児たちが由伸をお手本にしなくなり、「好きな選手」に挙げなくなったのではないか。
ただ、由伸の考え方は非常に参考になる。昨年、フォームについて聞かれた彼は、〈左足をすっと踏み出す理由? それは……言いませんよ(笑)〉と答えた後、その根拠を明かした。
〈将来、僕の真似をしてくれる投手が増えるかもしれません。野球を楽しんでいる少年少女が真似ばかりしてしまうと、意図もわからず練習をしてしまうからです。少ない情報を鵜呑みにして、方向性を間違えてほしくないんです。口で説明するのは難しいですから〉(2024年2月3日配信/Full Count)
由伸は〈自分に合う練習、投げ方を見つけてもらいたい〉(同前)とも語っている。良いと思えば他人から反対されても試し、自分に合わないと判断すれば取り入れない。普段からトレーニング方法など野球に関する勉強を欠かさず、自分の感覚を大切にしているため、取捨選択能力に長けている。この姿勢がよりクローズアップされれば、由伸の順位は再び上がるかもしれない。
由伸が21票から3票に激減した分、オリックス時代の同僚である宮城大弥が5票(28位)から14票(9位)と伸ばした。昨年は左大胸筋の筋損傷で約1カ月半、戦列を離れて規定投球回に達しなかったが、防御率1.91の素晴らしい成績を残している。171cmと小柄な身長で活躍する姿に球児が共感したのだろう。実際、「好きな選手」に宮城を挙げた15名中11名が左投手であり、そのうち8名が175センチ以下だった。