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「俺って何を言われてもいいキャラになってますよね?(笑)」30歳目前で初のスペイン挑戦…浅野拓磨に漂う“王者マドリー”を食うゴールの嗅覚
text by
小野晋太郎Shintaro Ono
photograph byGetty Images
posted2024/08/18 11:30
今季からマジョルカに移籍した浅野拓磨(29歳)。王者レアル・マドリーとの開幕戦でジャガーポーズは見られるか
この日も店員からデザートを聞かれて「コーヒーお願いします」と答えた浅野は、「次の日も朝からオフの自主トレがあるから」と足早に近場のホテルに帰っていった。
そして2週間後、想像していた未来は現実となる。急転直下で届いたのは、スペイン・マジョルカからの新たな吉報だった。30歳を手前にして浅野がこれまでプレーしてきた環境と異なる、テクニックを最も重視する国からのラブレター。だが、決断に迷いはなかっただろう。浅野の言葉がよみがえる。
「今はチームが決まってないし、もしかしたら日本に帰る可能性だってあるかもしれない。でもそれとは全く関係なく、俺は迷った後の決断がよかったと思うのは、決まってるんです。道はなんでもあると思うし、自分が想像するのは常に自分がなりたい自分です。だからそのために努力を続ける。俺は絶対うまくいくと思ってます」
いきなり王者レアル・マドリーとの大一番
多くの日本人選手の活躍で忘れそうになるが、日本人にとって5大リーグでプレーする壁は未だに低くはない。特にFW登録の選手にとっては、その壁はいまだに高くそびえたっている。
今夏も既に何人もの日本人が海を渡ったが、多くは中盤とディフェンスでプレーする選手たち。イングランドとドイツの1部リーグと考えれば、現在FW登録で所属する選手は、一人もいない。スペインでプレーしているのも、久保建英(レアル・ソシエダ)しか存在しない。
8月18日、ラ・リーガの舞台で、マジョルカ浅野の新たな挑戦がいよいよ始まる。
個人にとっても、チームにとっても1年の始まりを告げる最初の大一番だが、ただの開幕戦、というわけではない。相手は王者レアル・マドリー。銀河系軍団の同じFWには、今夏移籍市場の最注目銘柄、キリアン・エムバペが降臨する。
世界で放映され、おそらく多くのメディアが長い時間をとって待ち構えているはずのエムバペの“リーグデビュー戦”。だが……主役を食うのが浅野の仕事だ。
まさに「ここぞの舞台」となったデビュー戦の見出しは、同じく新天地に降り立った敵FWのダークホースが、ジャガーポーズで奪いに行く。