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「俺って何を言われてもいいキャラになってますよね?(笑)」30歳目前で初のスペイン挑戦…浅野拓磨に漂う“王者マドリー”を食うゴールの嗅覚
text by
小野晋太郎Shintaro Ono
photograph byGetty Images
posted2024/08/18 11:30
今季からマジョルカに移籍した浅野拓磨(29歳)。王者レアル・マドリーとの開幕戦でジャガーポーズは見られるか
セルビアの強豪パルチザンでのデビュー戦。キャリアにおける「ここぞの試合」でゴールを決める。名前も知らないチームメイトに祝福され、信頼を一気に勝ち取った。海外に来て初めての感覚。追い込まれた男は覚醒し、2年目に得点王ランキング2位の18ゴールに加え、8アシストをマークし、再びドイツへ返り咲く。セルビアでの活躍を見たボーフムは浅野に10番を与えて歓迎した。
「あの時は、全部W杯から逆算して考えてて。そのためには海外でプレーしてないとダメだと思っていたから。いつだって危機感を忘れたことはないですよ。セルビアにいった時も……ここからどうなるんやろって。サッカー選手になってからはずっと危機感と隣り合わせ。チームが決まっても明日の練習で大ケガをして、キャリアが終わるかもしれないし。
どっちもあるわけですから、もう終わっていく可能性と、まだまだ成長する可能性。でも、俺はいつもそうじゃない方になるって信じてるんです。ずっとそっちに賭けてきたんですよ。自分はマイナスに向かわない。常に1年後、もっとすごい選手になってる方に、懸けてきた。そっちに懸けたら後はもうやるだけだから」
全てを懸けていたのが、ワールドカップだった。
転機となったロシアW杯落選
2018年ロシアW杯。最終予選で活躍してきた中で、ヴァイッド・ハリルホジッチの解任と共に直前でメンバー落ちを経験した。浅野は「サッカーキャリア最大の悔しさ」と振り返る。
以降、4年後のカタールW杯へ向け、遊びはもちろん、飲みに行く機会はなくなった。パーソナルトレーナーをつけ肉体改造をし、甘いものも基本的に遮断、専属の料理人もセルビアまで呼び寄せている。
全てを犠牲にしたからこそ、神は4年後に浅野に微笑み、夢は果たされた。ドイツからのゴールという最高の形で。二度と過ごせないようなストイックすぎる4年間をこえて、今は何をモチベーションに走るのか?
「俺からしたら夢をかなえても、モチベーションは変わらなかったですよ。もうまたゴールが欲しいだけ(笑)。モチベーションはゼロにならないです。次は何が必要なのかってことだけが思い浮かんで、常にその時の100%を注ぐ。カタールW杯までは、その注ぐ先を全部W杯にしてました。
今(6月時点)はチームがまだ決まってないので、もう2カ月、3カ月先の自分を想像して、5大リーグのチームにいる未来を想像する。そこでずっと一つの目標にしている2桁得点を目指す。今は全部が一番の目標です」