“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「あ、これはくるな」浅野拓磨が板倉滉を信じて走った瞬間…失意のW杯から4年、ドイツ代表GKノイアーをぶち抜く逆転ゴールを決めるまで
posted2022/11/24 17:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Getty Images
浅野拓磨の魅力が詰まった逆転ゴールだった。
カタールW杯初戦。優勝候補ドイツに圧倒される中、森保一監督は信じ続けてきたスピードスターを投入する。
57分、前田大然に代わって浅野はピッチに飛び出していった。
「0-1ならいけるな」
ベンチで戦況を見つめていた浅野は隣に座った堂安律、南野拓実らとこう言葉をかわしていた。逆転を信じて疑わないメンタルと持ち前のスピードを生かし、前線からの果敢なプレスを見せ、5バックのブロックを作った時にはボランチラインまで落ちてプレスバックに参加。攻撃面では最前線で身体を張ってボールを収め、カウンターの起点を作った。
75分に同じ途中出場の堂安によって同点ゴールがもたらされると、その瞬間は83分に訪れた。
名手ノイアーをぶち抜く逆転ゴール
自陣でDF板倉滉がボールを持った瞬間、「あ、これはくるな」とDFラインの裏のスペースへ走り出した。その直感どおり、板倉からロングフィードが届く。後方からのパスに見事なトラップでマイボールにすると、そのままトップスピードでエリア内に侵入。ドイツ代表DFシュロッターベックに体を当てられながらも角度のないところからの右足を振り抜いた強烈な一撃は、世界的名手ノイアーの手の上を通過してゴールネットに突き刺さった。
優勝候補のドイツからの金星をもたらした決勝ゴール。試合後のミックスゾーンでは、「ずっと準備をしていましたし、試合に出たらやることしか考えていなかった」とユニフォーム姿のまま答えた。
続けて、「今日の試合に関してはヒーローになれたと思います。4年前からずっとこういう日が来ることを想像して準備をしてくることができたので、それが結果につながったと思います」と、これまでの道のりを振り返った。