欧州サッカーPRESSBACK NUMBER

「俺って何を言われてもいいキャラになってますよね?(笑)」30歳目前で初のスペイン挑戦…浅野拓磨に漂う“王者マドリー”を食うゴールの嗅覚 

text by

小野晋太郎

小野晋太郎Shintaro Ono

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2024/08/18 11:30

「俺って何を言われてもいいキャラになってますよね?(笑)」30歳目前で初のスペイン挑戦…浅野拓磨に漂う“王者マドリー”を食うゴールの嗅覚<Number Web> photograph by Getty Images

今季からマジョルカに移籍した浅野拓磨(29歳)。王者レアル・マドリーとの開幕戦でジャガーポーズは見られるか

 2024年6月、今から2カ月前、シーズンを戦い終えた直後に食事をする機会に恵まれた。場所は都内の焼肉店。目前で手際よく肉を焼いてくれているストライカーは、この時、全てのチームとの契約を終えていた。一般人と並べてもいいのなら、フリーター状態にある。次の「国」がどこになるかすら決まっていなかった。

 久しぶりの再会とあって、少し緊張感が漂う。著者はハイボールを何杯も一気に流し込んで早めに酔おうとした。一方、浅野は気にしているのかいないのか、ウーロン茶を飲み続ける。常にストイックな姿勢は状況や立場によらない。

 W杯で日本中を熱狂させるゴールを決めた「ストライカー」も、海外に渡って早8年。今年の11月で30歳になる。

 ブンデスリーガのクラブを渡り歩き、時にはセルビアの過酷な環境でもプレーした。ポジションはFWからトップ下やウイングまで、求められれば前線のポジションは全てこなした。

 昨季は契約最終年の3シーズン目を迎えたボーフムでレギュラーとして活躍し、32試合で7ゴールを決めている。

「本当に色んなポジションでやりましたね。自分が中心でゲームを作ることもあったし、ゴールを決める以外の役割も、パスの出し手に回ることも多かったです。チーム内の立ち位置の変化も含めて、色んな経験をしました。

 日常がそういう形だったから、日本代表に帰ったら本当にやりやすいなっていつも思いますよ。とにかくパスが出てくるし、出す側の質がメチャクチャレベルが高い。でもブンデスでも一人で打開する力が付いたし、最低限の結果も出せた。幅は圧倒的に広がってます」

アーセナル移籍で話題を集めた2016年夏

「とにかく裏へ走るから、俺に出せ」

 広島時代はスピード。とにかくスピード。前を向いて走り出せば、追いかけてくるものは誰もいなかった。

 当時の監督は森保一。ボランチの青山敏弘からスルーパスにロングボール、最高のパスが自分だけのために飛んできた。広島が広島たる一番強い時期に入団したスーパールーキーは3年で2度のリーグ優勝に貢献し、2016年に21歳で満を持して海外に飛び立った。

 だが、海外では初めから壁にブチあたる。プレミアリーグ・アーセナルへの完全移籍を果たしていたが、英労働ビザを取得できず、そのまま当時ブンデスリーガ2部だったシュツットガルトへレンタル移籍となり、結局、ピッチでは一度も赤いユニフォームは着ていない。

 ブンデス挑戦では実力に関係のない“契約の問題”で出場を禁止されたこともある。「スピードはいらない」とストロングポイントすら否定され、自分がどういう選手であるかも忘れそうになった。結果、レベルの高い5大リーグを離れ、縁もゆかりもないセルビアの地に流れ着いた。

 だが、心は折れなかった。

【次ページ】 セルビアで大活躍「ずっと危機感と隣り合わせ」

BACK 1 2 3 4 NEXT
浅野拓磨
マジョルカ
ボーフム
アーセナル
シュツットガルト
パルチザン・ベオグラード
サンフレッチェ広島

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ