バレーボールPRESSBACK NUMBER
「足は引っ張らないでくれと…」男子バレー小野寺太志の母が語る、素人同然だった息子がオリンピック選手になった日「祐希の言葉が嬉しくて」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/07/29 17:05
2度目のオリンピック出場を果たした小野寺太志(28歳)。202cmの高さがありながら、器用さを併せ持つミドルブロッカーだ
パリ五輪前哨戦となったネーションズリーグでは準優勝。多くのメディアが男子日本代表をメダル候補として取り上げ、注目度は一気に増した。選手たちも「メダル」ではなく「金メダル」を目標と公言している。
頑張れ、頑張れと応援するだけなら楽だが、“史上最強”と謳われる日本代表の中心でプレーする息子に、母はどんな思いを寄せるのか。
「試合が終わった時に『太志、いたね』ぐらいの印象でいいんです。目立たなくていいから、着実に。自分のやるべきことをやる。昔はミドルブロッカーってレシーブやトスが苦手と言われ続けて来たけれど、太志はそれができて、ミスしないのも強み。オリンピック予選が終わった時の記事で、祐希が『めったにミスをしない太志が……』と答えていたのを見て、祐希もそんな風に思ってくれているんだって、それだけで嬉しかったんです。
最近はサーブミスが多いのがちょっと反省ではありますけど(笑)ミスなく、いろんなプレーをソツなくできる。親バカですけど、ミドルでもこれぐらいはやらないと、と示したのは太志の功績だと思っているから、目立たず仕事して、最後まで残って閉会式に出られるといいなって思っているんです」
「大きな志」ではなく、「太い志」と書いて「たいし」と読む。名前は父が考案し、二人で決めた。
「大志だと画数がよくなくて、一画増やすと最高の運勢だと書いてあったんです。それならば一画加えて、最高の人生を歩ませてあげたかった。大きい志もいいけれど、太くてブレない志を持つ。そんな風に生きてほしいよね、と思ってつけた名前だから、“大”じゃなくて“太”。一画が私たちにとっては、大事なんです」
名の通り、ブレずに堂々、穏やかに。パリの地で戦う息子を、驚きと興奮と幸せを噛みしめながら、母が見守っている。
(前編から読む)
◆連載第3回「山内晶大」編は近日配信予定です