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「マサヒロ来ないね…」男子バレー“絶体絶命の夜”に一体何が? 黒星スタートの今こそ生かされる経験「あの負けが僕らをひとつにした」4人の証言
posted2024/07/30 11:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Getty Images、Naoya Sanuki/JMPA、Kaoru Watanabe/JMPA
「マサヒロ来ないね……」
空いたままの席を見つめながら、山内晶大がポツリとつぶやいた。
食事会場で同じテーブルに座る石川祐希、高橋健太郎、小野寺太志、西田有志ももちろん気づいていた。いつもはそこにいる関田誠大が来ていないことに。
昨年行われたパリ五輪予選第2戦、エジプト戦後の夜のことである。
昨年、日本代表はネーションズリーグで、主要な世界大会では46年ぶりとなるメダルを獲得し、世界ランキングも5位(五輪予選開幕時点)に浮上。期待と注目度が一気に高まっていた。
8カ国中2カ国のみに出場権が与えられる五輪予選では、後半戦にセルビア、スロベニア、アメリカという強豪との3連戦が控えており、前半戦は力の差があると思われた相手に4連勝して勢いをつける算段だった。ところが第2戦のエジプト戦で、1、2セットを奪ってから、3セットを連取され、痛恨の逆転負け。大会序盤にして窮地に立たされた。
「本当に申し訳ない気持ちでした」
セッターの関田は敗戦の責任を背負いこんだ。のちにこう振り返った。
「弱気になっていた部分もあると思う。僕自身、結果にこだわりすぎると自分のよさがなくなって単調になることがある。積極性がなかなか出せなかった。完全に相手に流れが行き、いつもなら決まる点が決まらなくて『あれ?』と、そういうちょっとずつの積み重ねで、ああいうふうになったと思う。あの時は、本当に申し訳ない気持ちでした」
試合後は目を赤くしてミックスゾーンに現れ、取材に応じることなく足早に通り過ぎた。
山内はその後の関田の様子をこう語っていた。
「すごい落ち込み方でした。今大会はいろんな人が期待してくれている中で勝たなければというプレッシャーがある。彼はたぶんある程度自分に自信があって、自分に期待していただけに、すごくショックで悔しい思いがあったと思います。試合後は、周りを遮断するような感じでした」