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「机がマジで壊れるんじゃないかって…」“怒る名将”ポステコグルーのブチ切れ伝説…“偽SB”松原健が語る「それでもボスが信頼された理由」
posted2024/02/12 11:03
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
AFLO SPORT
プレミアの指揮官となった「ボス」の実像とは
Jリーグを経てスコットランド、そしてプレミアへ。
これは選手の話ではなく、オーストラリア人指揮官アンジェ・ポステコグルーの話だ。セルティックでリーグ2連覇を達成して今季からトッテナムの監督に就任すると、ハイライン&ハイプレスのアタッキングフットボールを引っ提げて開幕から8勝2分けと10戦負けなしで首位に立った。現在(2月12日時点)は4位と一時の勢いはなくなったとはいえ、再び優勝戦線に加わってくる可能性は十分にある。
彼は2年半前まで、日本にいた。
14年間もリーグ制覇から遠ざかっていた横浜F・マリノスを2019年に頂点へと導き、堅守型から超攻撃型へフルモデルチェンジさせた。それは決して簡単な道のりではなく、就任1年目の2018年シーズンは残留争いに巻き込まれている。戦術もさることながら、自分の信念を曲げることなく貫いてきたからこそ今の彼がある。
ポステコグルーの愛称は「ボス」。トレーニングウェアにも「BOSS」と刻まれていた。F・マリノス時代のマネジメントにあらためてフォーカスすることで、そんな“親分”の実像を浮かび上がらせたい。
ポステコグルーの戦術で特徴的なものの一つが、いわゆる“偽サイドバック”だ。サイドバックが中に入ってビルドアップに加わり、数的優位とスペースをつくって前線のアタッカーへパスを供給するスタイルは、Jの舞台に衝撃を与えたと言っていい。右サイドバックでその役割を担ったのが2018年シーズン当時、アルビレックス新潟から移籍して2年目の松原健であった。
松原健の反発「無理に中には入らねえから」
2017年11月、オーストラリア代表を指揮していたポステコグルーは大陸間プレーオフに勝ってロシアワールドカップ出場を決めながらも辞任。その1カ月後、F・マリノスの監督に就任することが発表された。
どんなサッカーをF・マリノスでやるのか、どんな人なのか。前情報をあまり持っていなかった松原は「オーストラリアのように3バックをやるのかなと思ったくらい」だったという。トレーニングやミーティングを通じて攻撃的なサッカーを志向しているのは伝わってきた。