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“妥協しない男”ポステコグルーの問いに徹夜で答えを…松永成立が証言する“横浜F・マリノスのGK革命”「アンジェはリスクなんて言葉を使わない」

posted2024/02/12 11:04

 
“妥協しない男”ポステコグルーの問いに徹夜で答えを…松永成立が証言する“横浜F・マリノスのGK革命”「アンジェはリスクなんて言葉を使わない」<Number Web> photograph by Etsuo Hara/Getty Images

2019年、優勝シャーレを掲げる横浜F・マリノスの松永成立GKコーチ。アタッキングフットボールで大きな役割を担うGK陣を鍛え上げた

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Etsuo Hara/Getty Images

アンジェ・ポステコグルーは横浜F・マリノスをどう変革し、日本のサッカー界に何を残したのか。トッテナム・ホットスパーの監督としてプレミアリーグで活躍する名将の素顔を、選手、コーチ、そして経営者の証言によって掘り下げていく。第2回は、アタッキングフットボールの“肝”を支えたGKコーチの松永成立が、指揮官との「緊張感に満ちた信頼関係」を語った。(全3回の2回目/#1#3へ)※文中敬称略

松永成立が語る第一印象「大変そうな監督が来たな…」

 松永成立が55歳のころ、3歳年下のオーストラリア人指揮官はやってきた。

 日産自動車サッカー部の黄金期を支え、日本代表でも活躍した横浜F・マリノスのレジェンドは、GKコーチとしてもその手腕を発揮していた。2007年から古巣に戻って指導にあたり、独自で編み出すトレーニングメニューの「質」、居残りまでとことん付き合う「量」ともに一切、妥協はしない。情熱的な指導によって育て上げた榎本哲也、飯倉大樹らF・マリノスのGKは、1試合(90分換算)の平均失点数を表す「防御率」において常にJリーグでトップクラスの数字を叩き出してきた。10年以上実績を積み上げてきたベテランコーチにとって、アンジェ・ポステコグルーとの出会いがまさかこんなに大きなものになるとは思いもしなかった。

「最初は、何か大変そうな監督が来たなって。GKコーチとしてある程度確立してきたものもあったから、乱されたくはなかった。口数はそんなに多くない人。でも知らず知らずのうちに自分の質を上げてくれたし、うまく(考えが)整理されたというか、乗せられた感じがありましたね」

 ベテランコーチはそう言って、口もとに笑みを浮かべた。

 ボスというニックネームが、ピタリと合うと思えた。

「最初に会って次の日から練習が始まるので、GKとフィールドプレーヤーが融合するメニューではどういったものをやるのか聞きにいったら“明日になれば分かる”の一言だけ。それからずっとそんな感じで、あんまり余計な話はしない。トレーニングメニューをヘッドコーチが考えて、アンジェはそれを確認してOKを出す。そして実際のトレーニングも、ヘッドコーチに陣頭指揮を執らせて“大将”として全体的に見ていく。日産時代の加茂(周)さんみたいなタイプだなって思いましたね」

【次ページ】 「シゲ、どう思うんだ」明確な答えを求めた指揮官

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