「なんでだっていう思いがありました。10日間分の思いです」

　それから数カ月後、宣言通り、下田は責任を取る行動に出る。交流があった日本リーグ・マツダの今西和男総監督に「どうしても見てもらいたい選手がいる」と年賀状で売り込んだのだ。この1通の年賀状によって今西とハンス・オフト監督の訪問が実現し、無名だった森保のサッカー人生が劇的に好転することになる。

「空白の2週間」が森保を変えた

　話を森保が復帰した高2の日に戻そう。

　サッカー部後輩の樋口は深堀町の先輩が部室に戻って来たときのことをよく覚えている。

「ハジメ君は監督から叩かれ続けて相当に痛かったと思うんですが、そんな素振りは見せず、いきなり僕たちにゲジゲジ（虫）を投げて来たんですよ、いたずらっぽく。照れ隠しだと思います。ハジメ君はここからだんだん真面目になっていきました」

　森保は当時の気持ちを『ぽいち 森保一自伝』に綴っている。

「（サッカー部を）やめた途端、急に心細くなってしまった。同時に自分は何をやりたいんだろう、とひたすら考えた。自分の将来が全く見えなかった。これから何をやろうか、と考えてもサッカーのことしか頭に浮かばない。今の自分にはやはりサッカーしかない。サッカーから距離を置いて初めてそのことに気がついた」

　森保は「空白の2週間」によって、自分をより深く知る機会を得た。森保青年の中でアイデンティティが定まり、サッカーで生きるんだという強い覚悟が芽生えたに違いない。

＜続く＞

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#7に続く

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