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「彩艶、ナイス」なぜ堂安律は「丸くなろうと思っていない」のに“仲間を守るのは当然”と考えるか「由勢も…5年前の自分とかぶるんです」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKoji Watanabe/Getty Images
posted2024/01/29 11:06
アジア杯インドネシア戦の日本代表スタメン。堂安律や鈴木彩艶はもちろん、チームは一枚岩になるために戦っている
想起されるのは、フライブルクでのチームメイトで、背番号1を背負うノア・アトゥボルのことだ。
ナイジェリア人とドイツ人の間に生まれたアトゥボルは、早くから将来を嘱望されてきた。昨年3月に日本とドイツのU-22代表が対戦したときにドイツのゴールマウスを守っていた選手といえば覚えている人もいるだろうか。
フライブルクは昨シーズン限りでオランダ代表GKフレッケンがチームを去り、アトゥボルはトップチームへと昇格すると同時に、開幕からゴールマウスを守り続けている。
そんなアトゥボルを、シュトライヒ監督は、メディアからの批判に反論してかばってきた。そして良いパフォーマンスを見せれば、心の底から賛辞を送っている。つまり、堂安は「おじいちゃん」と形容するシュトライヒ監督をはじめとしたクラブのレジェンドたちが、どれだけ若い選手を支えてきたのかを知っているのだ。
僕は丸くなろうと思ってない。でも…
その点について堂安に尋ねると、質問を否定することなくこう答えた。
「僕は全然、丸くなろうと思っていないですよ。ただ、『チームのために』とはいつも思っています。自分はこう見えて、意外とフォア・ザ・チームな人間なので(笑)。僕はロッカールームでも『頑張れよ、お前ら!』みたいなことはそれほど多くは言うタイプではないですけど……」
そこまで話してから、宣言した。
「だから、点を取らないと!」
そういうと、堂安はさっそうと取材エリアを後にした――。
つぶやくように「彩艶、ナイス」
日本代表の試合日のロッカーは、基本的に背番号順に席が割り振られている。
ただ、23番を背負う鈴木の席は例外で、今大会のメンバーで番号の最も大きい26番の佐野海舟の次、最後に位置する場所に設けられている。だから、「1番」を背負う前川黛也と鈴木の席が、コの字型のロッカールームの出口から最も近いところにある。フィールドプレーヤーよりも先にウォーミングアップへ出ていく彼らのための配慮からだろう。
試合後、堂安はチームの中で少し遅れてロッカーに戻ると、各選手の席を回っていった。勝利を分かち合うハイタッチをするために。26番の佐野と手のひらを合わせた後のことだった。
最後に陣取る鈴木の方を見て――素晴らしかったという意味を持つ――首を振るジェスチャーをしてから、ハイタッチをかわした。
「彩艶、ナイス」
鈴木にしか聞こえないようなボリュームで、つぶやきながら。
<第1回からつづく>