核心にシュートを!BACK NUMBER
「彩艶、ナイス」なぜ堂安律は「丸くなろうと思っていない」のに“仲間を守るのは当然”と考えるか「由勢も…5年前の自分とかぶるんです」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKoji Watanabe/Getty Images
posted2024/01/29 11:06
アジア杯インドネシア戦の日本代表スタメン。堂安律や鈴木彩艶はもちろん、チームは一枚岩になるために戦っている
54分、相手の右サイドの高い位置からのフリーキックだった。日本が課題としているセットプレーでの守備の局面だ。鈴木は勇敢にゴールラインを離れ、前に出てジャンプ。相手が蹴ったボールを誰かにつつかれないように、前向きに倒れながらしっかり抱え込んだ。そこから立ち上がるとすぐに、相手陣内の右サイドをめがけて得意のパントキックを見せた。
走り出していたのは、堂安だった。
堂安は見事なトラップで、対峙した相手が足を出せないところにボールを置く。そこから加速して、旗手怜央とのワンツー。そして相手GKと一対一になる決定機をつかんだ。
しかし、シュートはゴールのわずか左へと外れた。
それぞれの「武器」を生かし合いながら
「これが決勝なら、かなり後悔していたと思います」
堂安がそう振り返ったのは、ゴールを決めたいという自らのエゴのためだけではなかった。
鈴木はあの場面についてこう話す。
「クロスへの力強い対応は自分の『武器』でもあります。そして、そこで(鈴木が)キャッチしきることで、別の『武器(*ロングキック)』につなげられます。そうやって僕がボールを持った時に、周りの選手たちが非常によく動いてくれるんです! だから、自分の良さが出せました。チームの助けになれること。それが一番です。ああいうプレーを増やして、その質を高めていきたいんです」
森保一監督も、あの場面をこう振り返った。
「可能性を感じるプレーだったと思います。もちろん、今回エントリーしている2人のゴールキーパーも、同様のプレーができると思いますよ。
ただ彩艶だからこその飛距離については、チームで『武器』として使えるように共有しています。彩艶は非常に冷静にプレーしてくれたと思いますし、あの状況で相手のゴールへ向かっていくプレーを選択してくれたので、良いところを出してくれたと思います」
仲間は彩艶のために身体を張っている
ここまでの証言を聞くと、チームメイトが攻撃“だけ”に期待しているように見えるかもしれないが、それは違う。
彼らが鈴木のために身体を張っているのが、その証拠である。
インドネシア戦の31分、相手のコーナーキックの場面。中村敬斗が相手選手と鈴木の間に立ち、マークする相手が鈴木の動きを妨害するのを防いだ。69分の相手のロングスローの場面では、冨安健洋、町田浩樹、上田綺世が、相手選手と鈴木の間に次々と立ちはだかった。
伏線はイラク戦にある。