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川上哲治でも長嶋茂雄でもなく…「巨人史上最多勝利監督」原辰徳の原点は“浪人時代”にあった!「人生経験のページ数が足りない…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/10/10 17:00
巨人軍を率いて累計17年、9度のリーグ優勝と3度の日本一に導いた原辰徳監督。今季限りで退任することに決めた
感染が広がる中で、もちろんプロ野球も動いた。プロ野球選手会がクラウドファンディングを使った「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」への寄付を呼びかけ、そこに12球団の選手も続々と呼応した。一方巨人は原前監督の呼びかけで坂本勇人内野手、菅野智之投手ら5人が1000万円ずつ、合わせて5000万円を医療従事者支援のために東京都に寄付した。そして翌21年のキャンプではキャンプ地の医療負担を軽減するために、独自にPCR検査施設を沖縄の那覇に開設したりもした。
親会社の読売新聞社と球団、そしてチームが一体となってコロナ禍の中で、野球をやるための環境作りを進めていった。それでもチーム内でクラスターが発生し、一軍の試合が開催不能となる事態に直面することもあった。そういう様々な障害を乗り越えて、野球は徐々に日常を取り戻していったのである。
「我々が何かをすればメディアの皆さんがそれを取り上げてくれて、世の中の人々が知るきっかけにもなる。それができるのは、我々がプロ野球選手だからだということ。そういう環境にある人間は、世の中に貢献できる何かをしなければいけないという気持ちを持つことが大事だと思う。日本の中でそれだけプロ野球というものが持つ役割の大きさだとも思います」
原監督、退任の心境
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もちろん監督の仕事は、チームを勝利に導くことであり、そういう意味ではこの3年間の成績は原前監督にとっても不本意なものだった。このチームを何とかしたいという思いももちろんあるし、悔しさもあるはずだ。
それでも結果責任を負うのもまた、監督の仕事なのである。
「心境に一点の曇りもございません。晴れ晴れとした気持ちでバトンを阿部監督に渡します」
最終戦後のセレモニーでは監督交代をファンに報告し、こう退任の心境を語った。
感情で行動はしない。
それもまたあの2年間で学んだことだった。