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川上哲治でも長嶋茂雄でもなく…「巨人史上最多勝利監督」原辰徳の原点は“浪人時代”にあった!「人生経験のページ数が足りない…」 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2023/10/10 17:00

川上哲治でも長嶋茂雄でもなく…「巨人史上最多勝利監督」原辰徳の原点は“浪人時代”にあった!「人生経験のページ数が足りない…」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

巨人軍を率いて累計17年、9度のリーグ優勝と3度の日本一に導いた原辰徳監督。今季限りで退任することに決めた

「同じ巨人というチームを指揮する。その風景は変わらないのだけれど、私自身の心境にはかなりの変化があった。自分というものの骨子をどこかに描けている状態で、物事に立ち向かっていくことができた」

 06年に2度目の監督に返り咲くと、10シーズンにわたってチームを率いてリーグ3連覇を2度、合わせて6度の優勝と2回の日本一を達成した。さらには2度のリーグ優勝を果たした第3期を含め、通算1291勝(1025敗)は、V9の川上哲治監督や長嶋茂雄監督を凌いで、巨人のチーム史上最多の勝利数である。

 文字通り「名将」への道を歩んできた。その原点は、実はあの2年間にあったのである。

 ただ、原辰徳という監督が日本のトッププロスポーツであるプロ野球のリーダーとして果たした功績は、その勝利数や優勝の回数だけではない。

 公共性の高いプロ野球が社会的にどういう役割を果たさなければならないのか。その責務を果たす。それもまたあの2年間で学んだことが大きく影響しているのである。

前に進むことの大切さ

 10月6日に行われた阿部慎之助新監督の就任会見。その席で山口寿一オーナーは原前監督の功績に触れ、特に「コロナ期が思い出深い」と語った。

 2020年に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、日本も例外なく未曾有のパンデミックに襲われた。プロ野球界も全ての活動がストップし、開幕も延期される事態となったのである。

「野球も(シーズン開催が)危ぶまれた時期に原監督は一貫して開催を主張した。開幕は見送られたが、練習は休まず続け、無観客ながらリーグ優勝した。先を見通せない時期にぶれずに公式戦開催を見据えたことが優勝につながったと思います」(山口オーナー)

 誰もが経験したことのないような、この危機的状況の中で、プロ野球という日本のトッププロスポーツが果たせる役割とは何だったのか。原前監督はパンデミックの中でそのことを意識し、そのために自分から情報を発信し、感染拡大に警戒しつつも周到に準備をしながら、しっかり前に進むことの大切さを世の中に訴え続けた。

「あの光景だけは忘れられない」

 そこにはある原風景があった。

【次ページ】 「あの光景だけは忘れられない」

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