「僕はキャプテンとして十分ではなかったですし、プレーも不完全燃焼でしたが、みんなに助けられてここまで勝ち進むことができました。優勝できなかったのは残念ですけど、楽しかったです」

　首に掛けられた銀メダルを見詰めて満足そうに微笑んだ小野の表情は、今も目に焼き付いている。

　ワールドユースは、小野のいろんな面を見せてくれた大会だった。

「天才」「非凡なセンス」「比類なきタレント」など、彼を形容した言葉はいくつもあったが、ピッチ上だけ見れば、確かにそれはすべて当てはまる。世界2位という結果は、小野のプレーとキャプテンシーが大きく寄与している。だが、それらはピッチを見れば理解できることだ。小野という選手の凄さの本質はプレーはもちろん、試合を追うごとに見えてきた深い人間性にあった。それは、Jリーグの試合を追うだけでは、なかなか見えてこないものだった。

出れなかった伸二のためにも勝ちたかった

「（スペイン戦に）出れなかった伸二のためにも勝ちたかった」

　決勝後の本山雅志の言葉は、チーム全員の声を代弁していたように思える。

©Naoya Sanuki

　小野は、みんなのために、みんなは伸二とともに。

　たったひとりの選手を媒介としてチームは一致団結し、熱く戦い、結果を出した。

　小野は、この時から、そういう存在の選手だった――。