沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
田原成貴に聞く“武豊が超一流な理由”と理想のジョッキー像「結局、福永洋一さんに行き着くんです」「祐一くんの引退は寂しいね…」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/12/24 17:03
2022年、ドウデュースで6度目の日本ダービー制覇を成し遂げた武豊。田原成貴氏は同騎手を「もはや歴史上の人物」と称えた
「祐一君の姿を無意識に…」名手への惜別の言葉
田原氏が「名手」と言う現役ジョッキーのひとりに福永祐一騎手がいる。しかし、1996年のデビュー当初から好成績をおさめていた福永騎手を直接指導したこともある田原氏は、福永騎手が1999年にGI初制覇を遂げ一流騎手と見られるようになってからも厳しい評価をしていた。それが今や、こうまで絶賛するようになったのは、いったいどんなところが変わったからなのか。
「まず、何度も言っている騎手の重心と馬の支点。同じ馬でも、スタートしたときや、道中、それに追うときといろいろ変わってくるのですが、祐一君は、それを瞬時にポンと合わせられる。そしてそこからあまり揺れないし、動かない。お父さんほどではないけど、すごいなと思う。あと、コントレイルで無敗の三冠を獲る前から、例えば、本質的には中距離がベストの馬に長距離でもいいパフォーマンスを発揮させるなど、馬の能力を補う乗り方ができるようになっていた。それがコントレイルとのコンビで顕著に表れたんでしょうね。もともと頭がいいんだから、それに一番大事な馬乗りが追いついたら、やっぱり無敵になりますよ。それに、いろんなタイプの馬に乗ったことで感性も磨かれましたね」
その福永騎手は調教師試験に合格し、来年2月限りで騎手を引退することになった。
「正直な気持ちを吐露すると寂しいね。ここ2年くらいの『騎手・福永祐一』の騎乗は素晴らしく、おれの理想とする騎手像に最も近いものだった。理想とする騎手はもちろん、祐一君の父である福永洋一さんです。おれは競馬を見るとき、無意識に福永洋一さんを追っている。そんなおれを満足させてくれる祐一君の騎乗が見られなくなると思うと寂しいを通り越して、悲しくなる。しかしそれはおれのエゴですね。引退を決めた彼の意志を尊重して『調教師・福永祐一』を陰ながら応援しようと思います。でも、これから競馬を見るときは、福永洋一さんの姿を追うように、祐一君の姿を無意識に追うんでしょうね」