競馬PRESSBACK NUMBER
夫の“遺言”で牧場を継いだら、なんと3億円の借金が!「馬を知らない女に何ができる」と陰口を叩かれた元タカラジェンヌの“華麗なる逆襲劇”
posted2022/12/25 17:01
text by
伊藤秀倫Hidenori Ito
photograph by
Kiichi Matsumoto
「『詐欺の人』って本当にうまいんですよね。(証拠を残さず)捕まらないように上手にやる。だから私、刑事さんに言ったんです。『刑事さんでも絶対にダマされますから』って(笑)」
自分が「詐欺の人」にダマされた話をあっけらかんと笑い飛ばすところに、この人の真骨頂があるのかもしれない。北海道日高地方にある「ヴェルサイユファーム」の代表、岩崎美由紀さん(62)は元タカラジェンヌという異色の経歴の持ち主だ。同牧場は規模は小さいながらも、今年、牡馬クラシック三冠(皐月賞、ダービー、菊花賞)すべてに出走したビーアストニッシドを始めとする重賞馬も輩出している創業35年の老舗牧場である。
美由紀さんは牧場のオーナーであった亡き夫の遺志を継いで、牧場経営の経験がまったくない状態から、この世界に飛び込んだ。周囲の冷たい視線の中、素人同然だった彼女は、次々と襲いかかるトラブルを乗り越えて、3億円の借金があった牧場をいかにして立て直したのだろうか?(全3回のうち第1回/続きは#2、#3)
自分が「詐欺の人」にダマされた話をあっけらかんと笑い飛ばすところに、この人の真骨頂があるのかもしれない。北海道日高地方にある「ヴェルサイユファーム」の代表、岩崎美由紀さん(62)は元タカラジェンヌという異色の経歴の持ち主だ。同牧場は規模は小さいながらも、今年、牡馬クラシック三冠(皐月賞、ダービー、菊花賞)すべてに出走したビーアストニッシドを始めとする重賞馬も輩出している創業35年の老舗牧場である。
美由紀さんは牧場のオーナーであった亡き夫の遺志を継いで、牧場経営の経験がまったくない状態から、この世界に飛び込んだ。周囲の冷たい視線の中、素人同然だった彼女は、次々と襲いかかるトラブルを乗り越えて、3億円の借金があった牧場をいかにして立て直したのだろうか?(全3回のうち第1回/続きは#2、#3)
上級生の前で「笑ってはいけない」宝塚
「なぜかわからないですけど、馬はずっと好きだったんです。それこそ宝塚の頃から乗馬をやりたいな、と思っていたんですけど、やっぱり『危ないから』と止められてしまって……」
兵庫県出身の美由紀さんが宝塚音楽学校に入学したのは1975年のこと。厳しい上下関係や校則で知られる同校だが、当時の厳しさは今の比ではなかったという。
「新入生の頃の1年間は上級生の前で笑っちゃいけないし、こうやって目線を合わせてお話することも禁じられていました。(複数人で)歩くときは必ず1列になって、髪の毛が乱れているなんて絶対ダメで、ガチガチにピンで止めていました。なんかもう本当に軍隊のようで……でも、そういう日常生活があったからこそ、舞台に立つ喜びが倍増するんですよね」
宝塚歌劇団では「美雪花代」として入団3年目という異例の早さで花組トップ娘役に就任するなど活躍。退団後は女優として芸能活動を続けながら、私生活では30歳のときに結婚し、出産した。
「宝塚を退団したら乗馬しようと思っていたんですが、やっぱり芸能事務所の社長から『危ないからダメ』と止められて。それで結婚したから、さあ乗馬しようと思っていたら、今度は息子が生まれて……という感じで、こんなに馬と触れ合いたいのに全然叶わない人生だったんです。じゃあ息子にやらせようと(笑)」