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田原成貴に聞く“武豊が超一流な理由”と理想のジョッキー像「結局、福永洋一さんに行き着くんです」「祐一くんの引退は寂しいね…」 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2022/12/24 17:03

田原成貴に聞く“武豊が超一流な理由”と理想のジョッキー像「結局、福永洋一さんに行き着くんです」「祐一くんの引退は寂しいね…」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

2022年、ドウデュースで6度目の日本ダービー制覇を成し遂げた武豊。田原成貴氏は同騎手を「もはや歴史上の人物」と称えた

 田原氏はつづける。

「豊君が、直線で激しく追えるようになればもっといい、と言う人がいるかもしれないけど、そこを求めたら、スタートしてから追い出すまでの豊君のよさがマイナスになってしまう可能性もある。恐ろしく速い馬に乗せたら豊君のほうが上手いだろうし、逆に、重い馬、ズブい馬に乗せてみたらムーアのほうが上かもしれない。ディープインパクトはものすごいスピードも持っていたので、短距離でも掛かるメイケイエールのような危うさがあった。それを出さずに3200mでも能力を出せるように走らせることができたのは、豊君だからです。

 そういうことには触れずに『追える・追えない』と言うのはおかしいと思う。豊君は、すごく小さなアクションで最大限に馬を動かしている。豊君に『もっとガシガシ追え』と言ったら、もちろんできますよ。ただ、あれ以上やると、いいバランスが崩れてしまうんです。逆に、ムーアに『もっとソフトに、やわらかく乗れ』と言ったら、あの力強い追い方が消えるかもしれない」

「福永洋一さんはすべての要素が完全に近かった」

 そう言って田原氏は立ち上がり、ホワイトボードに五角形のレーダーチャートを記した。騎手に求められる要素を「感性」「体力(推進力)」「メンタル(戦略)」「柔らかさ」「バランス(重心)」の5項目に分けて、5段階で評価するものだ。これは、12月6日にYouTube「東スポレースチャンネル」で配信された「田原成貴が選ぶ『ジョッキー日本代表』が決定!」で見ることができる。

「すべてが完全な五角形に近かったのが福永洋一さんです。今の豊君は推進力のところが5段階評価の4くらいだとしても、感性やバランスは5.5とか6くらいかもしれない。そもそも、豊君が全盛期のときは誰も追えないと言わなかったでしょう。勝っていたから、そういう声を封印していた。それなのに、海外の騎手や、尻を鞍に打ちつける『トントン騎乗』で成績を上げた日本人騎手の直線だけを見て、豊君をやり玉に上げるのは間違っている。繰り返しになるけど、持ち味が違うんだから。ぜんざいを食って激辛じゃないと怒っているようなものだよね(笑)。浅見国一先生や伊藤雄二先生がご存命だったら、もっといい言葉で表現して、正しい見方へと導いてくれていたでしょうね」

【次ページ】 「祐一君の姿を無意識に…」名手への惜別の言葉

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