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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「おい、今の見たか?」名将が絶句したオリックスの主砲・吉田正尚18歳の弾道 青学大時代から温め続けたメジャーへの思いとは
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/11/07 11:02
劇的すぎるサヨナラ弾を放った吉田正尚は中嶋監督と熱い抱擁。この一撃がシリーズの流れを完全に変えた
当時、そんな吉田を早くから高く評価していたのが後に単独で1巡目指名することになるオリックス、そしてヤクルトだった。ヤクルトは結局、吉田と同じ「右投げ左打ち」ながら、六大学で通算最多安打のリーグ記録を更新した明大・高山俊(現・阪神)を指名。くじ引きとなったことで、当時の真中満監督の「当たりクジ勘違い事件」が起きたのだが、それは余談。いずれにしろ、その7年後にヤクルトとオリックスが争った日本シリーズでヒーローとなった吉田は、この2球団と神宮球場に本当に縁があったのだろう。
吉田は、日本シリーズ終了後にポスティングシステムによるメジャーリーグ挑戦の希望を表明。11月3日には球団側に意思を伝え話し合いが行われた。河原井氏のもとにも、その少し前にきっちりと連絡があり、夢に挑戦したいという熱い思いを明かしていたという。
青学大時代から描いていたメジャーへの夢
青学時代から、吉田はメジャーリーグ中継を食い入るように見て、当時ナショナルズに所属していて本塁打王も獲得したブライス・ハーパー(現フィリーズ)に憧れていた。
「大学4年の春には、アリゾナでキャンプをやったんですよ。レンジャーズが使う施設を借りて、マイナーチームとも試合をした。そこで施設を見学したり、当時レンジャーズにいたダルビッシュ(有)や藤川球児が来てくれて選手たちと話す機会もあった。あの時に、正尚も色々と感じたものがあったんじゃないかな。そのころから、ずっと夢を描いていたんだと思いますよ」
夢の実現へ一歩を踏み出す決心を固めた愛弟子の姿が頼もしい反面、ちょっぴり心配なことも。
「オーストラリアに行ったときには、帰りの空港で正尚がパスポートがない! って言い出してね。ホテルを出る前、何度も確認しろと言ったのに。出発カウンターのところでスーツケースの荷物を全部ひっくり返して大捜索。結局見つかったんだけど、そういうちょっと抜けてるところもあるんですよ(笑)。懐かしいですね。でも、もし来年から正尚がいなくなったら、プロ野球を見る楽しみもなくなっちゃう。それはそれでつまらないね……」
名将が「必ず結果を出す男」と評する稀代のスラッガー。そのスイングが、今度は全米を驚かせることになるのだろうか。
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