マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフトウラ話…日本ハム4位指名の“逸材”「スカウト部長が見逃した球団も複数あった」ドラフト全指名を検証する《日ハム・中日・ロッテ編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/30 17:05
中日1位指名の仲地礼亜投手(沖縄大・177cm83kg・右投右打)
マウンドの立ち姿の雄大な体躯。目立つのはスライダー、カット、カーブ、フォーク……多彩な変化球のゾーンの低さだ。プロではこれが「150キロ」より武器になる。
これだけの体をして、アベレージ140キロ前半。大学後半2年間の彼のミッションは「先発・完投」。そこにはいくらかのペース配分が必要だった。本気で投げれば、150キロぐらいいつでも投げる馬力は、むしろ底なしだろう。先発の2時間、3時間の苦闘の中で、これでもか……と蓄えた「引き出しの中の知恵」に期待したい。
平沢大河、藤岡裕大、小川龍成……アマチュア当時は「名手」のような語られ方をしていた遊撃手たちに、外国人・エチェバリア……2位・友杉篤輝(内野手・天理大)の指名は、いつまでもレギュラーになりきれない先輩遊撃手たちに、球団が下した鉄槌なのか。
プロで盗塁王を争えるスピードと走塁技術。パッと消えるような盗塁スタートとスライディングのスピードは、そのまま守備ワークにも発揮されて、タイプとしては正真正銘の名人・小坂誠(千葉ロッテコーチ)だ。
5位で金田優太(内野手・浦和学院高)、育成でも勝又琉偉(富士宮東・188cm78kg・右投右打)に、黒川凱星(学法石川高・178cm75kg・右投右打)……今年は徹底的に「ショートストップ」で押した。
金田優太は、投手としての可能性も秘める。全身のバネの柔軟性と強靭さ、ロングスローに見せる投手仕様の腕の振りとスピン量抜群の球質。この1年でユニフォーム姿がガラッと変わるほど、筋肉量も増えて、なんだか、どんどん「投手」に寄っていくようだ。
「投手」として3位指名しているのだから、田中晴也(日本文理高)は投手でスタートするのだろうが、この選手、飛ばせる能力も捨てがたい。力任せではなく、ジャストミートさせて飛ばしたい方だから、打に合理性を求めているのがいい。稀少価値でいったら「打者」ではないか。足がどうの、守りがどうの言っていたら、「長距離砲」は生まれない。
ハイライトは、4位・高野脩汰(投手・日本通運)だろう。
関西大当時も快速球左腕として期待されたが、立ち上がりに不安があったり、なかなか素質開花とはいかなかったのが、社会人2年間で、全力投球でストライクが続くようになり、自信のこもった腕の振りがボールを走らせた。
今の左腕独特の角度を帯びたクロスファイアーには、ストライクゾーンで勝負できる強さと勢い、つまりスピン量があり、腕が振れるようになったから、フォークの効き方が違ってきた。
ストライク先行で投げられるようになり、目の前3人やっつけて来い!の中継ぎが、来季あたまからの働き場所だ。
<広島・楽天・巨人編へ続く>