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「私は答えられない」投票先に口を閉ざすバロンドール主催者が、受賞を熱望するムバッペをべた褒めする理由とは?「彼は卓越している」 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byGetty Images

posted2022/10/15 17:04

「私は答えられない」投票先に口を閉ざすバロンドール主催者が、受賞を熱望するムバッペをべた褒めする理由とは?「彼は卓越している」<Number Web> photograph by Getty Images

PSG順調にゴールを重ねるムバッペ。今年クラブと3年契約を結んだが、退団や移籍に関する報道が絶えない

――しかしムバッペに関しては、ロシアW杯以降世界のトップとして活躍しながら、まだバロンドールを獲得していないのはどうしてでしょうか?

PF 忘れてならないのは彼はまだ23歳に過ぎないことだ。これからの選手で何も終わってはいない。たしかにメッシは23歳のときに2度目を受賞したが彼は例外だ。ムバッペのこれまでの最高順位は4位で、もちろん満足はしていないだろう。できるだけ早く受賞したいし、少しずつ近づいてはいるが簡単ではない。

 彼には複数回受賞できるポテンシャルがあるのは間違いない。もちろん競争は厳しいから大変だが、逆に一度も受賞せずにキャリアを終えたら大きな驚きだ。その能力の高さといったら……。彼がフランス人だから言っているのではない。本当に卓越している。

――カタールW杯とチャンピオンズリーグがとても重要になるわけですね。

PF 22~23年シーズンでいえば、W杯の後にチャンピオンズリーグが続く。どうなるかはわからないが、バロンドールはマラソンレースだ。W杯に始まり数カ月後に決勝を迎えるチャンピオンズリーグまで続く耐久レースで、しかも今季はシーズン途中にW杯が開催されるちょっと特殊な日程だ。選手は適応を迫られる。

バロンドール獲得に必要なこと

――インタビューでは他にも様々な興味深い発言がありました。例えばバロンドールを獲得するためにはコミュニケーションとロビー活動が重要だと語っています。

PF バロンドールを得るにはいろいろ考慮しなければならないことがあると言っているが、最も重要なのはピッチの上のパフォーマンスとも述べている。たとえプレスと良好な関係を保ちながらロビー活動をおこなうにしても、ピッチ上で活躍しなかったらどうにもならない。

 たしかにバロンドールにはコミュニケーションの力も大きく、投票委員に強い印象を与えるために鮮烈なメッセージを送ることも大切だ。だからピッチ上のパフォーマンスと同時にピッチ外でも模範的でなければならない。そこのところをムバッペは完璧に理解している。

 ただ彼は、バロンドールはピッチ外の活動で獲得できるとは言っていない。あくまでもピッチ上で何をするかが重要だと語っている。

――また彼は、「バロンドールのためにプレーするのではない。バロンドールとともにプレーする」と言っているのも興味深いです。

PF その通りで、例えばクリスティアーノ・ロナウドがそうであったように、投票の時期が近づくにつれて、投票委員たちに最大限の印象を与えるために本気でプレーする選手たちがいる。そこでハットトリックを決めれば、投票委員が強く印象づけられるからだ。だが、個人主義に走りすぎるのは逆に良くない。つまりムバッペに関しては、印象を与えるために最大限の努力をするのはもちろんだが、それでチームメイトを軽んじてしまえば身も蓋もない。

【次ページ】 ムバッペの自負

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