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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球スカウトたちのため息「今年は本当にいないよ」今秋“ドラ1候補の25人”「大阪桐蔭倒せる投手って声も…でもプロで働けるかは別問題」
posted2022/05/11 17:05
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
「いやあ、困りました。いない……って言っても、こんなにいない年もないでしょ」
あるスカウトの方が、ネット裏の席につくなり、そうぼやいた。
「ほんと、その通り!」
たった今まで、別の話で盛り上がっていたスカウトが、間髪入れずに共感のひと言を発した。
ゴールデンウィーク直前のある球場。目の前では、高校野球の県大会第1試合が、ちょうど終わったところだった。
「だいたい僕らの仕事って、毎年、いない、いないから始まるんですよ。でもセンバツが終わって、学生野球や社会人が始まって、今ごろになるとどんなにいない年だって、その年のドラフトの“核”になるような選手が4人か5人は出てくるもんですよ」
「去年だったら、小園(健太・市立和歌山高→横浜DeNA1位)とか、森木(大智・高知高→阪神1位)とか。誰に訊いても『そりゃ1位でしょ』っていうのがいたし、大学だったら、隅田(知一郎・西日本工業大→西武1位)なんか、この時期には、九州見てる人から『1位じゃなきゃ獲れない』って情報が入ってましたもんね」
そういう誰もがこぞって推すような存在が、今年のアマチュア球界にはほとんど見当たらず、困ってもいるし、心配もしているという。
「“ドラ1らしき者”を20人とか25人とか挙げておくしか…」
では、今年みたいな年の「スカウト活動」というのは、いったいどうするのか?
訊いてみたら、うーんとひと唸りしてから、こんな話になった。
「はっきり“1位”って見えてるのがいないんだから、とにかく“1位らしき者”を20人とか25人とか挙げておいて、この先の実戦を見ながら、そこからどんどん消していく……それしか、手がないでしょうね」
1位らしき者。
いつもの年なら、数人に絞った1位候補の成長ぶりを追いかけて、こっちがいい、あっちが伸びた、と前向きな議論が展開されるところが、今年は本当にたいへんそうだ。
ならば、その1位らしき者とは、いったい誰なのか?
翌日も場所を変えて、何人ものスカウトの方たちに選手の名前を挙げていただいて、忌憚のない「評価」もしてもらった。
ほんとに1位かどうかわかりませんよ、ぜんぜん自信ありませんけどね……どのスカウトも、予防線を張りながらの人選だったから、本当に難航しているんだなと思う。
その数、25名。予想通り大勢になったので、2回に分けて、その内容を聞いたままにお伝えしたい(全2回の1回目/#2へ)。
前編は「高校生編」。北から南へ、1位らしき者の9選手からだ(※なお、文中のAスカウト、Bスカウト……は発言を区別するための表現で、同一人物ではありません)。