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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「あの負けん気の強い男の子が…」中村憲剛を感動させた三笘薫の“W杯決定弾” 先制点の連携も「麻生グラウンドで何度も見てきた」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2022/03/28 17:02
3月24日のオーストラリア戦で2ゴールを決め、日本をW杯に導いた三笘薫。その活躍は幼少期から同選手を知る中村憲剛氏にとっても感慨深いものだった
「麻生グラウンドで何度も見てきた連携」で奪った先制点
果たして、選手たちは森保監督のメッセージをしっかりと受け止めました。三笘薫が89分、94分に得点をあげるのです。
1点目は僕にとってとても馴染み深いものでした。川崎フロンターレの麻生グラウンドで、Jリーグで、何度も見てきた連携です。フロンターレでプレーする山根視来と、かつてプレーしていた守田英正と三笘は、お互いの動きが分かっている。だから、足を止めずに反応できる。彼らにとっては「いつもどおり」のプレーでした。
あの場面は攻めるのではなく、キープでもいい時間帯でした。崩しのアクションを起こした山根も、ボールを下げるのかなと思わせて、ギリギリまで溜めたところでギアチェンジして、アウトサイドでペナルティエリア内の守田へパスを出しました。
受け手の守田も、山根からアウトサイドでパスがくると分かっているかのようで、予備動作を入れて相手DFの前でボールを受けました。ボールを入れた山根は出して終わりではなく「出して入る」動きでペナルティエリアに入り込み、守田からのリターンパスを受けマイナスへボールを送りました。
ペナルティエリア内でふたりの崩しを見ていた三笘は、山根からマイナスのボールが来ると信じて足を止めずに反応しました。同じチームでプレーをした3人の「イメージの共有」による、見事な崩しから生まれたゴールでした。
試合前から雨が降っていて、グラウンド状態は良くない。さらに、疲労感に襲われる後半終了間際です。厳しいコンディションと時間帯で、山根は最後までタフさを見せてくれました。このアシストで酒井とは違ったタイプの右SBとして存在感を高めたと思います。勝てばW杯出場が決まる大一番で自分を信じ、クラブで結果を残してきたプレーでアシストを記録できたのは、彼にとって大きな自信になったでしょう。
三笘薫の2点目について「解説は要りませんね(苦笑)」
三笘の2点目も、僕にとってはいつも見てきたものです。アディショナルタイムに入っていましたから、彼もボールキープを選んでいい時間帯でした。相手もキープされるのかなと思ったはずで、その瞬間にギアをローからトップへ一気に上げて、2人、3人、4人と抜いていき、誰にも触れさせることなくゴールを奪いました。まさしく「ザ・三笘薫」と言っていいプレーで、このプレーに解説は要りませんね(苦笑)。