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戦力外通告されたブラジル名手 ロナウジーニョは夜遊び、悪童エメルソンの斜め上すぎる解雇理由とは
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2020/11/18 06:00
(左から)アドリアーノ、ロナウジーニョ、エメルソン。一時代を築いたアタッカーだが、戦力外通告の理由は人それぞれである
伝説として語り継がれるクラシコ
ハイライトは2005年11月、MFジネディーヌ・ジダン(現レアル・マドリー監督)、CFロナウド、MFベッカム、左SBロベルト・カルロスらスーパースターを揃えて"銀河系軍団"と呼ばれた宿敵レアル・マドリーとのアウェーでのクラシコだろう。
左サイドをマジシャンさながらにドリブルで突破して2得点。敵地のサポーターからスタンディング・オベーションを受けた。2004年から2年連続で、世界年間最優秀選手。2006-07シーズン、チームは無冠だったが、彼自身は好調を維持した。
不摂生が続き、ペップから見限られた
しかし翌2007-08シーズン、ロナウジーニョは夜遊びなどの不摂生、練習への遅刻といった問題行動が次々と明るみに出る。クラブ関係者は、彼を慕っていた至宝メッシへの悪影響も懸念した。
フランク・ライカールト監督が解任されてペップ・グアルディオラが新監督に招聘されると、ジョアン・ラポルタ会長、チキ・ベギリスタインTD(テクニカル・ディレクター)、グアルディオラがエースの処遇を協議。監督就任会見の席上、グアルディオラが「ロナウジーニョ、デコ、エトーを含まないチームを考えている」と発言してメディアとサポーターを驚かせた。
ただし「もしロナウジーニョが以前のような選手に戻りたいと思うのであれば、我々の考えが変わることもある」という注釈付きだった。
しかし、バルセロナに残るため生活態度を変える気持ちはロナウジーニョにはなかった。「ここでやるべきことはすべてやった。新しい挑戦をすべき時が来た」と語り、ミランへ去った。28歳で、本来なら働き盛りの年齢だった。
ライカールトはエースが自由奔放にプレーすることを許したが、チームに細かい戦術を落とし込んで個ではなく全体の力で勝とうとするグアルディオラの元では、彼が特長を存分に発揮するのは難しかったのではないか。
今にして思えば二重の意味で、このときの退団は必然だったのかもしれない。
その後はミランで2季プレーした後、フラメンゴ、アトレチコ・ミネイロ(いずれもブラジル)、ケレタロ(メキシコ)、フルミネンセ(ブラジル)に在籍したが、バルセロナ時代のような輝きを放つことはなかった。