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戦力外通告されたブラジル名手 ロナウジーニョは夜遊び、悪童エメルソンの斜め上すぎる解雇理由とは
posted2020/11/18 06:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
「戦力外通告」
何と冷たく、厳しく、情け容赦のない言葉だろう。
「あなたはもう必要ありません」と言われたら誰でも悲しいが、とりわけその道一筋に精進してきたプロのアスリートは、己の存在を全否定されたような絶望的な気持ちになるのではないか。
フットボールの世界では、今この瞬間にも、世界各地で選手たちがクラブから戦力外を告げられている。今年8月20日に引退を発表した内田篤人(鹿島アントラーズ)、11月1日に今シーズン限りの引退を伝えた中村憲剛(川崎フロンターレ)のように自分の意思で進退とその時期を選べる者は多くない。
クラブの強化担当者や監督から「チームの戦力として考えていない」と言い渡されてそのまま引退する選手もいれば、新天地を求め、そこでまた花を咲かせる(咲かせようとする)選手もいる。
絶大な人気と実績を誇っていたスター選手が突然、それまで長年プレーしてきたクラブから「戦力外」を言い渡された場合は、本人のみならずメディア、サポーターにとってもショックが大きい。
エトー、デコらとバルサ復権の象徴となった
その典型的な例が、2008年のロナウジーニョのバルセロナ退団だろう。
17歳のとき、ブラジルのグレミオからデビュー。18歳でブラジル代表に初招集され、1999年のコパ・アメリカ(南米選手権)で華麗なプレーを連発。パリ・サンジェルマンで躍動し、2002年ワールドカップ(W杯)のブラジルの優勝に貢献。2003年、名門バルセロナに加わった。
当時、5シーズンもリーグ優勝から遠ざかり、クラブは低迷期にあった。そんなときに、太陽のように明るく、自由奔放で、人間離れしたテクニックを駆使してノールックパス、空中エラスチコ、背中トラップなど華麗でありながらユーモアも感じられるプレーを連発。チームに勝利をもたらし、サポーターを熱狂させて停滞ムードを一掃した。
テクニシャンのMFデコ、圧倒的な決定力を備えるCFサミュエル・エトー、そして若き天才リオネル・メッシらと共に2004-05シーズンにリーガで優勝すると、翌シーズンはリーガと欧州チャンピオンズリーグの2冠を制覇した。