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ファンペルシが土壇場で涼しい笑み。
マンUvs.マンC、芸術的だった喧嘩。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/05/01 19:00
シティ陣営の壁を見極めて、左足一閃。ファンペルシ渾身の一撃はユナイテッドに歓喜をもたらした。
首位攻防戦のダービーを現地で。
案の定、ユナイテッドは開幕からつまずいた。
エバートンに0-1。また、6節のトッテナムを2-3で落とし、12節にはノリッチに0-1で敗れている。ただ、15節終了時点で12勝3敗。0ポイントに終わったのはこの3試合だけだ。
総得点37はリーグトップの決定力であり、シティを9ゴールも上回り、なおかつ2ポイントのリードでリーグテーブルのテッペンに立っていた。
こうして16節のマンチェスター・ダービーを迎える。首位攻防戦──。
「マンチェスター・ダービー、現地で解説しませんか」
担当プロデューサーからの電話を、昨日のことのように覚えている。
断る理由などあるはずがない。二つ返事でOKした。
チャンピオンズリーグ、UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)、FAカップの決勝は現地から解説した経験があるが、マンチェスター・ダービーは話が別だ。遠足を間近に控えた子供のようにはしゃぎ、それでいていつもより日常生活に気を遣い、酒を控えた(と思う)。
異常なインテンシティ、喧嘩上等。
体調は万全だ。用意されていた最上階の放送席には、イングランドの12月らしい寒風が突き刺さる。マフラーやダウンジャケット、携帯カイロなどで防寒対策を施していても厳しい環境だ。
それでも高揚感が上回る。しかもキックオフ早々、ローカルダービーらしいギスギスしたファイトが繰り広げられ、エティハド・スタジアムが異様なムードに包まれていった。
異常なインテンシティが連続する。両チームとも、ちょっとやそっとのチャージではバランスを崩さない。アントニオ・バレンシアとガエル・クリシがド迫力の1対1を演じた。凄んでみせたマリオ・バロテッリに、ファーディナンドが不敵な笑みで応じている。喧嘩上等の姿勢だ。