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ファンペルシが土壇場で涼しい笑み。
マンUvs.マンC、芸術的だった喧嘩。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/05/01 19:00
シティ陣営の壁を見極めて、左足一閃。ファンペルシ渾身の一撃はユナイテッドに歓喜をもたらした。
前半に畳みかけるユナイテッド。
16分、ユナイテッドが先制する。
自陣深めからパトリス・エブラ→ファンペルシ→ヤングとつなぎ、このボールを受けたルーニーがシティDFを引き連れながら右足を振った。当たり損ね……。しかし、運よくギャレス・バリーの股間を抜け、GKジョー・ハートのセーブをあざ笑うかのようなゆったりとしたスピードでゴール左隅に吸い込まれていった。
29分、ユナイテッドがリードを広げる。
ラファエウとの連携でシティの左サイドをえぐったバレンシアがクロス。ルーニーがダイレクトで撃つ。このとき、シティDFコロ・トゥーレの判断がほんの一瞬だけ遅れた。もし、バンサン・コンパニが健在であれば……。0-2とされる8分前、頼りになるキャプテンはコンディション不良により、自ら交代を申し出ていたのである。
30分も立たないうちに2点のビハインドを背負うとは、シティのロベルト・マンチーニ監督も想定していなかったはずだ。
テベス投入とシティ大逆転の予感。
52分、早くもカルロス・テベスを投入。交代を命じられたバロテッリは不満を露わにし、ベンチに帰らずロッカールームに姿を消したが、喧嘩上等のムードでは一発レッドのリスクが付きまとう男である。そして、この采配が奏功した。
60分、シティが1点差に迫る。セルヒオ・アグエロのシュートはユナイテッドGKダビド・デヘアに阻まれたものの、セカンドボールを素早く回収したテベスがフリーのヤヤ・トゥーレにパス。グラウンダーの一撃が決まった。
そして86分、ついにシティが追いついた。テベスの左CKをニアポストでバリーがバックヘッドでつなぐ。パブロ・サバレタがおよそ25mのミドルを突き刺した。
シティが2点のビハインドを解消し、ユナイテッドはアドバンテージを失った。
しかも、舞台はエティハド・スタジアムだ。ムードは暴力的なほどホームチームに傾いている。残り時間は少なかったものの、シティ大逆転のシチュエーションは整いつつあったのだが……。