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ファンペルシが土壇場で涼しい笑み。
マンUvs.マンC、芸術的だった喧嘩。
posted2020/05/01 19:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
2012年、プレミアリーグはまだマンチェスター・ユナイテッドの天下だった。
トッテナムはレドリー・キングが引退し、ルカ・モドリッチはレアル・マドリーに移籍。アーセナルは組織の整備が遅れ、チェルシーはカウンターからポゼッションへの転換期。そして、リバプールは夜が明けていなかった。
唯一、ユナイテッドに対応しうるのはローカルライバルのマンチェスター・シティだけだった。ダビド・シルバ、サミル・ナスリ、ヤヤ・トゥーレを軸とする中盤、マリオ・バロテッリ、カルロス・テベス、セルヒオ・アグエロを擁する前線は、プレミアリーグどころかヨーロッパでもトップクラスの破壊力だ。
前シーズンも最終節の後半追加タイムに2ゴールを奪い、奇跡の逆転優勝。ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソン監督(当時)をして、「うるさい隣人」と言わしめるまでに成長していた。
香川らを補強したユナイテッドだが。
「ナメてもらっては困るんだよ」
2012-13シーズンの開幕前、ユナイテッドのリオ・ファーディナンドは不機嫌だった。メディアの評価はシティが優勝候補最右翼。ユナイテッドは二番手グループのひとつ、という予想が多かったことに腹を立てていたのである。
ファーディナンドの気持ちはよく分かる。ユナイテッドのキャプテンとして、下馬評でもシティを下回るなんて甘受できない。アーセナルからロビン・ファンペルシを、ドルトムントから香川真司を補強して攻撃力は倍増した。
ウェイン・ルーニー、マイケル・キャリック、ダレン・フレッチャーも健在だ。ユナイテッドはシティを上回っている、とリオは自信を持っていたに違いない。
しかし、39歳になるライアン・ギグス、38歳になるポール・スコールズの後継者が育っていなかった。アシュリー・ヤング、トム・クレバリー、アンデルソンでは力不足が過ぎる。したがって、選手層で上回るシティが優勝候補筆頭というメディアの見方は、決して的外れではなかった。